6BM8超3結パラシングルアンプの製作

-修正-

 製作してみたら、当初考えた回路とは、若干違ったものが出来上がってしまいました。電源トランスをきちんと測定しなかったために、出力段の電圧が足りないままで、動作しています。いい音で鳴っていますし、問題はないのですが、もう一度、設計から考え直してみました。

 以下は、前の製作方針を修正し、6BM8を130V、38mAで動作させようというものです。

【動作の構成】
 出力段のプレート電圧は、225Vとして考えます。
 電源トランスの実際の電圧は、190V-0V-190Vなので、190V×1.3倍=247V。
 パラレル構成なので、6BM8の2本分で88mAとすると、チョークトランス「春日無線のKAC-5120」の直流抵抗は147Ω。88mA×147Ω=12.9Vの電圧降下。また、出力トランス「春日無線KA-3250」は、B-3kΩ間で178Ω。並列なので半分の89Ωでは、88mA×89Ω=7.8Vの電圧降下。出力段のプレート電圧では、合計で、12.9V +7.8V=20.7Vの電圧降下があるので、247V-21V=226V。
 供給する電圧が低いので、出力段は、130V動作を考えました。
 出力トランスは、手持ちの春日無線KA-3250を2段重ねとします。
 6BM8は、2本ずつペアのものがあるので、方チャンネルごとに2本ペアでパラレルとします。

【初段】
 超3結アンプは、出力段のプレート電圧がそのまま初段の上側の球にかかり、初段の構成はSRPP回路と同じなので、上側の球は抵抗とみなしてかんがえました。

 「私のアンプ設計マニュアル」によれば、上側の球の負荷抵抗値は、
負荷抵抗値 = 上側球のrp + ( 上側球のRk × 上側球のμ ) + 上側球のRk
 ということなので、
 上側球のRkが、4.3KΩなので

負荷抵抗値 = 28K + ( 4.3K × 60) + 2K=288k
 になります。

 次のとおり、225Vのところから290Kのロードラインを引いてみます。
 バイアスは、-0.7Vより低いのは、望ましくないということなので、-1Vあたりとします。
 動作点は、電圧の関係で、ぎりぎり80V、Ip=0.5mAで考えます。
 上側球の負荷抵抗値=290kなので、Ip=0.5mAならば、電圧降下は、290k×0.5mA=145Vですから、上側球のカソード電圧=出力段のグリッド電圧は、225V-145V=80Vくらいになります。動作点は、上側球のカソード電圧が80Vなので、80V-(4.3kΩ×0.5mA=2.2V)=78Vとなりますので、だいたい良しとします。初段のカソード抵抗は、1.1V÷0.5mA=2.2kΩとします。

【出力段】
 3kのロードラインを引きます。できるだけ許容プレート損失7Wのラインに近づけて、ロードラインを引きました。
プレート電圧が225Vで動作点Vp=130V、Ip=38mA、バイアス-9Vで動作させ、出力段のカソード電圧は、225V-130V=95Vということで考えてみます。
 初段の上側球のカソード電圧=出力段のグリッド電圧が85Vなので、バイアス分(-9V)が10V程度なので、出力段カソード電圧、85V+10V=95Vになります。
 出力トランスは、春日無線KA-3250が手持ちの4個を、2個ずつ並列に接続します。出力段側は、3kを使います。3kを並列にした場合は、半分の1.5kとなりますが、パラレル構成なので、1本あたり3kの負荷になりますので、3kでロードラインを引きました。

 

【電源部】
 電源は、ダイオードを使い整流します。チョークトランスは、春日無線のKAC-5120が手持ちで2個あるので、左右にそれぞれ使います。
 トランスはオークションで手に入れた古いものです。「225V-0-225V、200mAと印刷されていますが、実際は、200V-0-200V、200mA」ということで手に入れたものです。
 6BM8に1本当たり38mA程度流した場合、パラレルで4本使っても、なんとか大丈夫です。
 整流後の電圧は、190V×1.3倍=247V。チョークと出力トランスで約20V程度の電圧降下をみて、出力段のプレートに供給できる電圧は225V前後です。

 出力段の電圧が90V以上になるので、80Vのヒーターバイアスをかけることにしました。

修正後の電源回路


【修正後の回路図】

 修正後の回路図と実機での電圧測定値です。ほぼ予定通り動作しています。初段のカソード抵抗を何本か拾い出し、あらかじめテスターで測定し、できるだけ抵抗値を揃えました。抵抗値の差を10Ω以内くらいまでに揃えれば、大体、左右の電圧は揃います。

 普通、超3結アンプは、初段カソードに、半固定抵抗を追加して、左右を揃えるのが一般的です。

修正後の回路図

測定結果

・最大出力 3.3W(クリップ前 1.2W)

・DF 1.4

・残留雑音 1.31mV

・周波数特性