をもとめて5000キロ!!

第3話

 〜アナーキーな夜は更けて


9月16日(日) 無敵のうに丼

 頭痛で目が覚めるが、肌寒くて久しぶりの布団からなかなか出る気がしない。
しばらく布団の中でまどろんでから気合をいれて一気に起きる。外は今日も雨模様だ。ストーブのある部屋に行くと先に起きた人がストーブに火をいれていてくれたため暖かい。
 テレビで今日の天気予報をチェックし出発の準備をしていると、名古屋の2人が出発すると挨拶にきた。行き先は俺と同じく稚内だそうだ。彼らはのんびりと走るそうなので途中でぶち抜くからと約束して見送る。

 カッパを着込み雨の中R238を北上する。途中コンビニで朝食をとり、しばらく走ってから給油する。やがて雨も上がりしばらく走るとクッチャロ湖の標識があり少し寄り道をする。少し休息した後R238に戻り名古屋の2人に追いつくためスロットルを大きくひねる。猿払村に入ったあたりで彼らに追いつき、約束どおり手を振りながらぶち抜く。ちょっと優越感に浸るいやらしい俺・・・ 

 その後も、そのままのペースを保ち宗谷岬めざしてひた走るが、もう少しで最北端の碑というところで目の前に鳥が、頭を横に振りよけようとするが次の瞬間、首が外れそうな衝撃がヘルメットを通して伝わってくる。う〜む もしかしてあの鳥はオサマビン・ラディンの手先か? まるで世界貿易センタービルになった気分だ。しかし俺は崩れないぞ〜!(鳥さん ご冥福を祈ります。 合掌)

 そうこうしているうちに最北端の碑に到着しお決まりの記念写真をとり次の目的地、野寒布岬めざして走る。

 清く正しい日本人の観光客的記念写真。それにしても寒かった!!

約1時間弱で目的地に到着しお目当ての樺太食堂に入る。ここは「うに丼」が売りだ。店内に入るとライダーには専用の席がありそこに強制的に座らせられる。間髪をいれずに名物のおばちゃんが注文を取りに来る。
 「通常4000円のうにだけのうに丼が今日は日曜だから1000円引きの3000円でイクラかホタテかカニのどれか一品をサービスします」
それにイクラをつけて注文するが、よく考えるとイクラをつけるとウニだけウニ丼じゃなくなるじゃないか〜と気づいた時には注文のウニ丼が運ばれてきた。もう後の祭りだ。しかし現物を見ると結構な量のご飯が見えないくらいウニが載っていてイクラが隅の方に少しだけ載っていた。食べてみるとこれまた美味い!
 しばらくして、噂に聞いていた記念品のバンダナ&オリジナルステッカーをおばちゃんがくれる。
(樺太食堂体験者に聞くと全員が記念品は要らないから安くしろと言う(爆))
 半分ぐらい食べた頃、もう1人ライダーがやってきて俺の前に座らせられた。そして、おばちゃんが注文を取るがさっきと同じセリフを言っているのがなんだかおかしい。
そして、最後にこちらの方が食べているのは・・・と俺の方を指してうに丼の説明を始める。なんだか恥ずかしい気持ちになるが、開き直って

俺 : 「俺はイクラを付けました。結構ボリュームがあって美味しいですよ。」

彼 : 「じゃぁ 私もそれをお願いします。イクラで」

おばちゃん : 「お兄さん若いから大盛にしなくていいのかい?」と聞き彼を凝視する。

彼 : 「・・・・・」

俺の方を見て意見を求めているようだ。

俺 : 「普通でも結構量は多いよ。俺はこれで十分だよ。」と意見する。

しばらくの沈黙....................

おばちゃん : 「お兄さんは若いからね〜 大盛で大丈夫だよ どうします?」

彼 : 「じゃ、じゃぁ〜 大盛でお願いします。」

 そして、大盛のうに丼が運ばれてきて俺と彼は顔を見合わせる。 すっ すごい! まさしく無敵だ!!
そしておばちゃんが一言、「残さないで食べてね。大盛頼んで残す人多いんですよ。もったいないからね。」と言って去って行く。
 またもや2人で顔をみあわせる。ほとんど強制的に大盛にさせておいてそれはないだろうって感じだが、なんだか憎めないのがこれまたおかしい。(ちなみに、彼は残さず食べました。)

 2人でうに丼を喰いつつ地図を広げながら情報交換をしていると、おばちゃんが「これから何処行くの?よかったら見てね」と稚内の観光案内のパンフレットをくれる。食べ終わると少し休息して彼より一足先に店を出て出発する。(後日発覚したが、うに丼は毎日3000円らしい)

 アクセスしよう!

 寒いので今日はR40を行けるところまで南下することにし、夕方頃に中川町付近まで来たので中川町営のキャンプ場で夜を越すことにする。ここは無料のログハウスがあるらしい。買い物を済ませキャンプ場に着き荷物を降ろしているとキャンプ場設備の補修作業をしていたおじさん達に囲まれ、またもや質問攻めにあう。どうしてBMWはこうもおやじ達の気を引くのだろうか?

 荷物をもってログハウスに入ると大阪のカップルライダーがすでに荷物を広げ夕食の準備をしていた。空いているスペースに陣取り寝床を確保し大阪のカップルと雑談していると、広島からカブで来ている人が買出しから帰ってきた。どうやらこの日は4人だけらしい。近くの温泉で汚れを落としてから、夕食を作り腹に詰め込む。

みんなで楽しく雑談の後シュラフに入って爆睡.........


9月17日(月) アンニュイな一日

 誰かのいびきで目が覚める。外は濃い霧が出ている。
ラジオのスイッチを入れ天気予報をチェックすると午前中は雨、しかも場所によっては強く降るところもあるらしい。雨の中を走るのはうんざりなので、このままここに連泊するこに決めもう一度シュラフに潜り込む。他の人は朝食をとり出発の準備を始める。やがて大阪のカップルがみんなで記念写真を撮りましょうと言うので写真を撮ると彼らは礼文島目指して出発していった。広島の人もいつのまにか出発していた。

 しばらく1人でのんびりしていると雨音が聞こえ出し、それはだんだん大きくなっていく。大阪の2人は大丈夫かな〜なんて心配していたら。雨音に混じってバイクのエンジン音が聞こえる。まもなくドアが開き全身ずぶ濡れの男性が入ってきた。彼は、隣町のキャンプ場でテントを張っていて天気が悪くなってきたのでここに避難してきたそうだ。しばらく世間話をしていると、また雨音の中をバイクのエンジン音が近づいてくる。そして、またもや全身ずぶ濡れの青年が入ってきた。彼は富良野から礼文島を目指している途中で、この大雨に遭遇して避難してきたそうだ。雨はさらに強く地面を叩くのであった。

 お昼頃になるとまた1人、宮崎からきたおじさんが避難してきた。その人と入れ替えに、朝からなにも食べていないという最初に避難してきた人が大雨の中、無謀にも買出しに出て行ったのである。その後、みんな不思議と会話をすることもなく、雨音の中をアンニュイな時間が流れていく。やがて買出しに出た人が戻ってくると雨も上がる。なんてタイミングの悪い人なんだろうと思う。

 雨が上がったので富良野から来た青年と歩いて買出しに行くことにする。20分ぐらい歩いて町外れにあるコンビニに着き夕食を買う。俺がのんびりしていると青年は買い物を済ませ先に帰ってしまった。
 俺も買い物を済ませ帰路に着くが、どうせ1人ならこの町を探検しちゃおうと思い街中を彷徨うが、これといったものが見つからない。しかたなくキャンプ場に向かっていると商工会議所の建物が目についたので寄ってみることにする。どうやらその中に観光協会があるらしい。
建物に入ろうとすると忙しそうにダンボール箱いっぱいのアヒルの人形を抱えた若い女性職員が出てきたので声を掛けると、いやな顔を一切せず俺の質問に耳を傾け聞いてくれ一生懸命に資料を探してきて答えてくれる。
 なんとなく彼女を家につれて帰りたくなる衝動にかられる俺であった。しばらくして彼女が仕事に戻ると俺もキャンプ場へ戻る。ここでわかったことはどうやらこの町は化石が出土されることで有名らしい。

 ログハウスに戻りしばらくまどろむ、日が傾いてくると温泉へ出かけのんびりと湯船に浸かり、その後夕食を作る。目玉焼きを焼いていると富良野から来た青年が生卵を持っていることに驚いている。そんなに驚くことなのかな? と思いつつ料理を終わらせ、それらをビールで胃袋に流し込む。食後は地図を眺める。

明日の予定を考えながらシュラフに潜り込むのであった。


9月18日(火) 当麻1、当麻町へ進攻す

 自然と目が覚める。今日も空は厚い雲で覆われている。熱いコーヒーで眠気を飛ばし出発の準備をし、みなに挨拶、旭川を目指し今日のスタートを切る。
 音威子府の道の駅で美味い蕎麦が食べられると聞いていたので寄ってみるが、時間が早いのでまだ開店していなかった。あきらめてR40を南下する。やがてまたもや雨粒が落ちてきて、気が付くと「津軽海峡冬景色」を口ずさんでいる。あまりにも寒いので道の駅「美深」に避難する。天ぷら蕎麦を食べ、暖を取っていると雨も上がり薄日が差してくる。気温もだいぶ上昇してきたので出発する。

 つかの間の青空にしばしバイクを止める.....

 R40をひたすら南下し、比布町の田んぼの中を走っているとトンボがビュンビュンと飛んできて次々とバイクやヘルメットを直撃する。まるで20mm機関砲の対空砲火を受けているようで結構怖い。トンボの攻撃が一段落すると「当麻町⇒」と標識が出てくる。気がつくとそっちにバイクを進めていた。

 JR当麻駅に着き、この町にはなにがあるのか調べると「当麻鍾乳洞」がどうやら名所のようだ。とりあえずそこへ行ってみる。想像では山の中にひっそりと鍾乳洞があるのかと思っていたが、到着してみると立派な駐車場や施設が整備されていて完全に観光地化されていた。しかも、鍾乳洞見学は有料だ。俺は見学をあきらめ土産物屋を眺めていると、アンモナイトの化石を発見する。値段も手頃なので1つ買う事にし選んでいると、店のばあちゃんが「1000円のは800円でいいよ」と言ってくれるが結局700円のものを買うことにする。お金を払い「おばちゃん、これ中川町で捕れたやつ?」と質問してみると「いや〜 どこだか知らないね〜 問屋は札幌だけど」と正直に答えてくれる。
 その時、この店の主人の爺さんがどこからか帰ってきて「お客さん どこから来なさった?」と聞く「神奈川県の相模原にある当麻というところです。」と答えると奈良県にも当麻というところがあると教えてくれた。
 「神奈川県か、懐かしいな〜 俺は昔、厚木にいたことがあるんだよ」と爺さん。そんな時にも、商売熱心なばあちゃんが「とうきび どうかね 100円にまけるよ」と言うので1つもらうことにした。「俺にも1つくれ」と爺さん、2人してとうきびを食いながら話を続ける。

 年齢的にもしかしてと思い「もしかして厚木基地ですか?」と聞くと、やはりそうだった。なんとこの爺ちゃんは昔201飛行隊で零戦のパイロットをしていたそうだ。もちろんこの後、爺ちゃんは目を輝かせながら昔話をしてくれた。零戦、97式艦攻、紫電、そして局地戦闘機「雷電」の上昇能力をみて感激したこと、夜間戦闘機「月光」を見て驚いたこと、前線に飛行機を届ける話、志願してから終戦までの部隊の話や、尊敬できる上官のこと等、
この手の話が好きな俺は時間が経つのも忘れて聞いていた。
 時々、ばあちゃんが時間を心配してくれるが、予定はないから大丈夫と答え、成り行き任せの旅であることを説明する。その後も、爺ちゃんは時々とうきびの粒を零戦の20ミリ機関砲のごとく口から飛ばしつつも熱く昔を語ったのである。

 2時間くらい経っただろうか爺ちゃんが疲れたところで出発することにした。
なんだか旭川まで走るのがめんどうくさくなったので、当麻ダムにあるキャンプ場にテントを張ることにした。
 舗装路はやがてダートになる。そろそろキャンプ場だろうと思ってもそれは出てこない。ダートは永遠と続く。
しかたないので行けるとこまで行ってみるとキャンプ場らしき跡地を発見。入口には「熊出没注意」の看板。結局キャンプ場は閉鎖されたようなので、来た道を引き返す。ダートをよろよろと走っていて思ったのだが、今年は熊の目撃が多いらしい。もしいま進行方向に熊が出たらどうしよう?
 こんな狭いとこでUターンなんて、できないしなぁ〜 神風アタックしかないかなぁ〜 散弾銃持ってくれば良かった。よし次回、来る時は持って来よう。などとくだらない事を考えていると舗装路に出た。ちょっと安心し町営のスポーツランドキャンプ場をめざす。

 キャンプ場の管理事務所で受け付けを済ませるとコインランドリーがあることを教えてくれる。
料金を聞いてみると他のところより安いので(乾燥機は大抵15分100円だが、ここは60分100円)溜まった洗濯物を片付けることにした。
テント設営をし、洗濯機を回し、自炊が面倒なので夕食を食べに行く。食堂を探しているとR39に出て道の駅とうまを発見。そこにある旭川ラーメンの店に入りラーメンと餃子を食べる。味はこんなものかなって感じ。
 キャンプ場に戻り洗濯物を乾燥機に移し、道路をはさんで反対側にある温泉にいく。それにしても北海道はどこに行っても温泉があって助かる。
ひとしきり温まったところでテントに戻り乾いた洗濯物をたたみながらビールを飲んでいると、突然大雨が降り出すが、今日は余裕があったのでテントの上にタープを張ってあるから安心だ。ひとしきり降った後、雨は上がったのでシュラフに潜る。

 しばらくすると、タイヤのスキール音とともにボーボーうるさい車のエキゾーストがキャンプ場に響き渡る。
どうやら地元の走り屋が駐車場でドリフトの練習をしているようだ。すぐに消えるだろうとしばらくは我慢していたが、遠くから見てみるとあまりにもヘタクソなので、むかつき堪忍袋の緒が切れた俺である。
 注意しに行こうとも思ったが、行けば喧嘩は必至な感情だったのと、相手の人数が多く最近の若い奴は危険なので、ここはぐぐっとこらえて、最終兵器を取り出すのであった。
 「携帯電話」である。「1」「1」「0」とキーをプッシュし、最後に受話器の上がったマークのキーを押す。
そうすると電話は旭川警察本部に繋がった。事情を話し電話を切る。この時、携帯の時計は22時5分。
しばらくするとパトカーが2台やってきて駐車場の出入口を塞ぐ。袋のねずみだなとほくそえむ俺であった。この時22時19分。

北海道警察殿、ご苦労さまです。


9月19日(水) アナーキーな夜

 犬の鳴き声で目が覚めた。
雲が多いがうっすらと日も射している。昨夜の雨で濡れたタープとテントを日なたに出し乾かしながら朝食を食べ地図を眺める。

 今日は、とりあえず富良野方面を目指すことに決め出発する。途中、旭川ラーメン村に寄るがやはり時間が早くてどの店も開店していない。しかたなく吉野家の牛丼を食べ、美瑛に向かう。

 美瑛駅につくと、やはり若い女性観光客が多くなんだか嬉しくなるが、駅前でお姉ちゃんばかり見ていても危ないので、観光名所を目指す。写真で見るのと同じ、あの景色の中を走るのは実に気持ちがいいが、観光名所はラブラブモード全開のアベックだらけで、ちょっと居心地が悪い。

 美瑛の丘は厚い雲に覆われていたのであった。残念.....

 ひと通り見たところで、十勝岳にある無料混浴露天風呂「吹上露天の湯」を目指し道道966号に進路を取る。途中、白金温泉で休息を取り、また走り出す。標高が上がってくるとだんだんと寒くなってくるが、ガスっていないので助かる。

 温泉につくと、駐車場には沢山の車が止っていた。貴重品とタオルを持って山道を少し歩くと温泉に到着。温泉も満員に近い状態である。さっさと服を脱ぎ湯船に浸かる。周りの人の会話を聞いているとほとんどの人が地元の人らしい。気になる女性は水着姿のおばちゃんが2人である。人生は思うように行かないものだ。

 のぼせそうになったので温泉から上がり服を着て、駐車場に向かってさっき通った山道を歩いていると40代ぐらいの女性から「温泉って1つだけですか?」と聞かれる。その質問に答えバイクに戻り出発の準備をしていると先程の女性がやってきて「どこから来たんですか?」とまた聞いてくる。神奈川からと答え彼女の顔を見ると美人である。
 服のセンスもよくハイソなマダムって感じだ。しばらく雑談をしていると彼女は俺のバイクがBMWであることに気づき興味を示す。
 よくよく話を聞くと過去にバイクの免許を取ろうとしたが教習所の教官と喧嘩して諦めたことがあったらしくバイクは好きとのことだ。それから急速に会話が盛り上がり、お茶をしたい気分になるが、近くにファミレスも喫茶店もないのが残念である。その後も立ち話をしていると彼女は立っているのに疲れたようで自分の車の方を気にしだした。俺は話を切り上げ出発することにする。

 富良野に向けて走り出してから思い返すとチャンス(何の?)を逃がしたとちょっと後悔するが、いい思い出ができたと自分に言い聞かせるのであった。

 中富良野町に入った頃に日が傾きかけてきたので、中富良野森林公園キャンプ場に行くが、無料の為ずっと住み着いているライダーが多くなんとなく空気が悪かったので、別のところに移動する。
 そして富良野市にある鳥沼公園キャンプ場に行くと、ここは先のキャンプ場よりもさらにひどく、キャンプ場というよりホームレス村の様相を呈している。すべてが青いのである。
 そう、あの青いビニールシートの色だ! ほとんどのテントがそのシートで覆われており、中にはそれで家を作っている奴もいる。
驚いたのはテントの前に郵便ポストがあり時々手紙が来るらしいことだ。それになぜか薄汚れた作業着姿の人も大勢いてホームレスらしさに拍車を掛けている。
 正直言っていやな予感がしたので、ここに泊まりたくなかったが、日が沈んだのでしかたなくテントを張り野営の準備をする。
その後、買出しに出かけ戻ってみると嫌な予感は当たっていたのである。誰かがバイオリンを弾いている。へたくそだ!。
そのうち、あちらこちらで馬鹿騒ぎが始まり、ついにはアフリカの民族楽器の演奏が始まったのである。
 タイコがドンドコドンドコとリズムを刻みなんだかわからない楽器の音も加わり、やがて唸り声も聞こえ出す。誰かトランス状態落ちたのだろか?
不気味だ!こっちは疲れているので寝たいが眠れない。まったく馬鹿野郎な奴らだ!
 今日も110番しようかと思ったが、それはちょっと見当違いなのでやめ、じっと演奏が終わるのを待つ。

こうしてアナーキーな夜は更けていったのである。


9月20日(木) 出会いを求めて

 なんだか疲れて目を覚ます。
いつものようにコーヒーでパンを流し込むと、さっさと荷物をまとめ出発する。今日は、富良野をのんびりと観光するつもりだ。
まず最初に麓郷の森へ行き「北の国から」からのロケ地を見る。「北の国から」を見たことのない俺にはピンとこないが、そこの喫茶店のお姉さんにはピンときたので、そこで軽い食事をとり富良野の観光情報を仕入れる。そして次は、富良野チーズ工房を見学することに..........

 平日のためかチーズ工房は思ったより混んでいない。バイクを駐車場の隅に置き、さっそく見学するが思ったより見るところがなくすぐに見終わる。
土産売り場で試食のチーズを食べしばらく時間を潰し、同じ敷地にあるミルク工房に行き人気があるらしいソフトクリームを食べる。確かに美味しい。そんなに甘くなくてさっぱりしていて後味がいい。

 食べ終えてボケーッとしていると「あのー」と、うら若き女性の声、振り向くと綺麗なお姉さんが1人立っている。なぜかドキドキする俺!
「シャッター押してもらえますか?」とお姉さん。やはりそうきたかと思いつつカメラを受け取る。
 彼女はカバンから小さなぬいぐるみをだし傍らに置き、すましたポーズをとる。彼女の後ろは白樺の林だ。なんだか不思議と絵になる。シャッターを切った後しばらく話をする。滋賀県からの一人旅で、今夜は美瑛のペンションに泊まるそうだ。それを聞いて俺もそのペンションに泊まりたくなったのは言うまでもない。

 彼女と別れると、ニングルテラスに向かうが見つからない。しばらく探して走り回っていると地図に載っていないRH「ゆかり」を発見する。
ここは噂でコインランドリーが無料と聞いていたのだが洗濯はこの前してしまったので通り過ぎることにする。結局ニングルテラスは見つからず諦めることにした。

 どこに行こうかと地図を見ているとお腹がすいてきたので、帯広でジンギスカンを食べることにする。
R38を帯広目指して走っていると道の駅「南富良野」を発見し休憩。土産物屋をぶらっと眺めたあと屋台で軽く腹ごしらえをしてバイクに戻ると、隣りにKSR80が停まっている。その脇には、日焼けした女の子が地面に座り缶コーヒーを飲みながら地図を広げている。なんだか渋い光景だ。
 俺は「こんにちは」と声を掛けのんびりと会話を始める。不思議と話しやすい子で感じがいい。よく見ると顔立ちも綺麗だ。あれこれと楽しく話をしていると時間が経つのは早いものだ。そろそろ出発しないと日がある内に帯広に着けそうもないので出発することにすると、彼女が「もう、行っちゃうんですか?」と寂しそうに言う。
 髪の毛のない俺だが、なんだか後ろ髪を引かれる思いだ。

 バイクに火を入れシフトペダルを踏み込みクラッチをミートする。手を振って見送ってくれる彼女に左手を上げ別れの挨拶をしバックミラーで小さくなっていく彼女を見つめる。やがて彼女はバックミラーから姿を消した。

 しばらく彼女のことを考えながら走る。まだまだ、いろんな事を話したかったな〜と後悔するが、もうどうしようもない。縁があればきっとどこかで再会できるだろうと自分に言い聞かせるのであった。

 帯広市内に入ると交通量がぐっと増える。久しぶりに都会を走るとけっこう緊張するものだ。お目当てのジンギスカンを食べるべく「みどり食堂」(この店は、美味くて安いと噂で聞いたのだ。)を探すが見つからない。住所はわかっていたのでコンビニで店員に聞くとすぐに道を教えてくれた。

 店に着くと名前の通り、その建物はみどり色だった。店内に入ると常連のおやじが数名ビールを飲んでいた。カウンターに座りジンギスカンとご飯を注文すると、それはすぐに出てきて、店のおばちゃんがガスコンロに火をつけ、鉄板をその上に載せてくれる。自分で焼きながらご飯を食べていると、暇だったのかおばちゃんが隣なりに座ってジンギスカンを焼いてくれた。おばちゃんがお姉さんだったらな〜なんて思いながら焼いてもらったのを食べる。味は噂どおり美味しくて料金もジンギスカン400円、ご飯180円、合計で580円とリーズナブルで大変満足だ!

 お腹が膨れたところで今夜の寝床を考えるが、帯広近辺には温泉がすぐ近くにあるキャンプ場がなく、日も沈みかけているので帯広駅近くのRH「にしな」で一泊することにした。

 にしなに着き部屋に入ると、すでに何人かの人が荷物を広げて寝場所を確保していた。どこに陣取ろうかと悩んでいると、「ここが空いているよ」と落ち着いた感じの人が教えてくれたので、そこに荷物を広げ寝床を作りながらその人と話をしていると、「今晩、ハンバーグを作るけど一緒にどう?」と誘われる。楽しそうなので仲間に入れてもらうことにし、とりあえず歩いて約5分のところにある「狸の里」と言う温泉に行く。

 温泉から戻る途中でビールとウイスキーを買いRHに帰ると、ハンバーグ作りが始まっていたので手伝う。仕切っているのは、最初に声を掛けてくれた人だった。話を聞くと彼は名古屋から帯広に就職する為の準備をしに来ているそうで、俺と同じ歳であることが発覚した。

 一方、ハンバーグはセロリやら東南アジアの得体の知れない香辛料やらが、次々に入れられどんどん怪しくなっていった。そして焼きあがるとやはりそれは、ハンバーグとは別物になっていたのである。

 料理が終わると各自が食べ物、飲み物を持ち寄り宴会が始まる。俺はさっき買ったビールとウイスキーを差し入れる。気になるハンバーグらしい物体は、今までにない味でやはり別のものに仕上がっていたが、不思議と酒にはあう。

 参加者は女性1名を含む6名で、みんな落ち着いていて感じのいい人たちばかりだったので、居心地がよく会話もはずみ酒もすすむ。

そして気付かないうちに夜は更けていくのであった。