ものの本によれば

独断と偏見によるアニメ・ビックリマン2000辞書です(未完成)。

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次界卵編 >> 付録 話数別 凶悪魔編へ >>
      

カンジーの苦悩と決意(35)…次界卵に近づくにつれて、大きくなるカンジーの迷い。不運にも悪魔に捕らえられてしまった先で、カンジーはあこがれのカーン様と再開し、堰を切ったように悩みを打ち明ける。

◆   ◆   ◆

ゼウスがZ化した巨大船で移動中の夜。悪い夢にうなされるカンジー。

・シャーマンカーンが連れ去られるところ(第7話)

・友人だったケーシーが、カンジーをかばって絶メッ鬼の攻撃にやられるところや、形見の時計(第16話)

・タケルとポーチが悪魔と化した姿でせまってくる悪夢

目をさましたカンジーの顔は汗でビッショリ。外の風に当たりに部屋を出る。

◆   ◆   ◆

夜の風を受けながら友達の形見の時計を見つめるカンジーのところに、タケルがトイレに起きてくる。

カンジー 「タケルさん…。」

タケル 「どうした〜…お前もトイレか?…どうかしたのか?」

カンジー 「アラクネの谷に着いて…。」

タケル 「?」

カンジー 「…次界卵を手にすれば、手にしたものの望む世界がやってくる…。」

タケル 「…何だよ、今さら?」

カンジー 「それが僕らの望む、『悪魔と天使が共存する世界』…。…それでいいんですよね?」

タケル 「病気か?顔色よくねえぞ。」

カンジー 「(立ち上がって)すいません、ご心配をおかけしちゃって…。」

去っていくカンジー。タケルはそんなカンジーを不思議に思いながら見送る。

◆   ◆   ◆

次の日。ゼウスの船の修理の為に、どのブロックを壁にはめ込めばよいかをカンジーに調べてもらおうとするタケル達。しかし、カンジーは形見の時計を見て、上の空。タケル達に呼ばれてハッとするカンジー。千里ゴーグルで調べて、指示を出すも、船の中が水浸しになるなど全て滅茶苦茶な結果に。

しまいには、冷房効きすぎになってゼウスのくしゃみが止まらずにそのままガスベラスの所に突っ込み、激突する。

ゼウス 「はあ、一時はどうなることかと思ったわい。やれやれ、貴重な水を無駄遣いしちまったのう。」

タケル 「カンジー、なにボケてんだよ、もうちょっとでおぼれるところだったんだぞ。」

ポーチ 「空でおぼれた、なんてシャレにならないわよ。」

カンジー 「す、すみません…。」

ゼウス 「ん?…」

コーラル 「どうしたの、ゼウスちゃん?」

ゼウス 「何かヒゲに引っかかったようじゃ、ムズムズしてたまらん。誰か見てきてくれんか?」

カンジー 「…僕が行って来ます。こうなったのも、僕の責任ですから…。」

カンジー水浸しの船内を1人歩いていく。

タケル 「どうしたんだ、あいつ?」

コーラル 「変なの〜。」

◆   ◆   ◆

ゼウス船のヒゲの所に来たカンジーがガスベラスを発見。

急いでタケル達に知らせに行こうとするカンジーだが、ポーカードの操るガスベラスによって捕らえられてしまう。

(バカラ、ピンゾロイド、ダンディーラーは偶然開いた入り口のせいで、船の中へ入ってしまっているため、ガスベラスには不在。)

◆   ◆   ◆

魂壺の上、すなわちカオスの上につるされているカンジー。

ポーカード 「あれが貴様らの船だったとはなあ。」

カンジー 「…。」

ポーカード 「気の毒だが返してやるわけにはゆかん。次界卵がどこにあるか、君らの情報を教えてもらわねばならんからな。」

カンジー 「何もしゃべりませんよ!」

ポーカード 「さあて、やってみなければわからんのではないかな…。(笑みを浮かべる)」

ポーカード 「ここは魂壺の入り口だ。中にはカオスが渦巻いている。」

カンジー、不安そうに魂壺の中のカオスをのぞきこむ。

ポーカード 「天使族にとってカオスを浴びることはすさまじい苦痛だ。お前の忍耐力がどれほどのものか、見物させてもらおう。」

カンジー 「悪魔!やっぱりお前達は、卑怯で残酷な悪のかたまりなんだ!」

ポーカード 「その通りだ…。今頃気づいたのか…。」

ポーカードがハンドルを動かすと、カンジーは魂壺の手前ギリギリまで下ろされる。

ポーカード 「魂壺の中はカオスの渦巻く世界だ。次界卵のありかを教える気になったら、引き上げてやる。ようく考えてみるんだな。」

カンジーをつるしていた鎖が一気に動きだし、カンジーは魂壺の中へ落とされる。

◆   ◆   ◆

カオスに触れて、その苦痛に絶叫するカンジー。

カンジーが見る魂壺の中の世界。いままでに戦ってきた悪魔達、連れ去られるシャーマンカーンの記憶、親友が絶メッ鬼の攻撃からカンジーをかばってやられた時の記憶。そして、その親友「ケーシー」本人の姿。

カンジーがあの日以来肌身離さず持っているのとは違う、ひびの入る前のケーシーの時計が現れるとともに、カンジーとケーシーの思い出が流れ始める。

◆   ◆   ◆

カンジー 「ケーシー。」

ケーシー 「カンジー、午後の授業が始まるぞ。」

カンジー 「ホントだ、教室に行かなきゃ!」

走っていくカンジーとケーシー。

授業中。

ケーシー 「またシャーマンカーン様の本をよんでたのか?」

カンジー 「うん、僕の尊敬する大学者だから。」

ケーシー 「お前って、カーン様のことになると、夢中だな。」

カンジー 「うん、いつか直接会って、お教えを受けたいんだ。それが僕の夢なんだ。」

ケーシー 「夢か。(ケーシー、微笑みながら少し上を向いて考える。)」

カンジー 「ねえ、ケーシー、君には何か夢はあるの?」

微笑んでいるケーシー。

授業も終わり、下校途中。

カンジー 「お医者さんになること?」

ケーシー 「ああ。天使も悪魔も、公平に診てあげられる医者になること。それが夢さ!」

カンジー 「天使も悪魔も公平に…。」

ケーシー 「昔、天使族と悪魔族は争いあっていた。今は平和に暮らしてるけど、完全に仲良くなったとは言えないだろう?同じ街に住んでいても、住んでる場所も、通ってる学校も、それぞれ別だしな。」

往来を通る人たち。天使族と悪魔族は、それぞれ道の反対側を歩いており、一緒に歩いている光景は見られない。

ケーシー 「俺は、悪魔と天使が、本当に仲良くなれる世の中を作りたい!本当に平和な天聖界を作るために、働きたいのさ!」

カンジー、ケーシーをじっと見る。

ケーシー 「な、なんだよ!」

カンジー 「すごいな、ケーシー、そんなにしっかり天聖界のことを考えてるなんて!」

ケーシー 「よ、よせよ。学校一の秀才に、お世辞言われるとくすぐったいぜ。」

カンジー 「お世辞じゃないよ、ホントにすごいよ、ケーシーは。」

ケーシー 「すごくなんかないって。ただ、俺、悪魔だって話し合えばわかりあえる、そう信じたいんだ。」

◆   ◆   ◆

悪魔・絶メッ鬼の手によってそのケーシーがやられる記憶再び。

カンジー 「ケーシー!!!」

◆   ◆   ◆

カオスに包み込まれているカンジー。そこに聞き覚えのある声。

シャーマンカーン 「カンジー。カンジー。」

カンジー 「!」

カーン 「カンジー、おびえるな、カンジー。」

カンジー 「カーン様!!」

カーン、カンジーを縛る鎖を断ち切ると、カンジーを目の前に連れてくる。

カーン 「久しいのう、カンジー。」

カンジー 「やはりご無事だったのですね?」

カーン 「無事とは言えんの。カオスに飲み込まれた他の天使と同じように、肉体を奪われ、魂もこうして魂壺に吸い込まれ、核に飲み込まれるのを、待つばかりじゃからな。」

カンジー 「!カオスに飲み込まれた天使の魂は、全てここに?」

カーン 「そうじゃ。わしもかろうじて残った力で結界をはっておるが、いずれは核に飲み込まれる。」

カンジー 「…。」

カーン 「(微笑んで)案ずるな。その前に脱出できれば、わしも他の天使達も、元の姿に戻ることができる。それには、お前達の力に期待するしかないがの。…カンジーよ。」

カンジー 「は、はい!」

カーン 「何か迷っておるようじゃな。」

少し悩んで、きり出すカンジー。

カンジー 「僕は、どうしていいかわからないんです。次界卵が手に入れば、天使と悪魔が仲良くできる世界を、本当に作ることができるんですよね。でも、僕には悪魔を信じることが、どうしてもできません。

・『僕たちの戦いは、悪魔と天使が共存するための戦いなんです!』(第17話)

…頭ではそうわかっていても…。

・『みんな、どうかしてる!アズールは悪魔なんですよ!』(第26話)

気持ちでは悪魔を…僕の友達を倒した悪魔を許せない…。次界卵に近づくにつれ、だんだん迷いが大きくなって…。

カーン様、天使と悪魔は、本当に仲良くできるんでしょうか!?

悪魔を信じようとしたケーシーは、悪魔に倒されてしまったし、僕自身も、悪魔への憎しみを捨てきれない!

悪魔と天使は、本当に手を取り合って、平和をつくることができるのでしょうか!?」

カンジー 「僕はカーン様を尊敬しています。教えて下さい、カーン様!僕の迷いを晴らしてください!」

カーン 「…カンジー、それで良いのじゃ。」

カンジー 「!?」

カーン 「自分を偽らず、己の中にある憎しみ、痛みをまっすぐに見つめる。それが大切なのじゃ。

誰しも迷い、思い悩む。自分をごまかさず、とことん悩みぬいて見るがよい。そうすればやがて、おのずと答が見つかるじゃろう。

よいか、カンジー。心には、光と闇の部分がある。光があれば、必ず影ができ、闇があるからこそ、光はまばゆく輝く。光と影は本来、1つのものなんじゃ。」

カンジー 「光と影が、1つのもの…。」

カーン 「うむ。カンジー、わしから、贈り物をしよう。わしの中に残った力、それをお前にわけてやろう。そうすればまだ肉体の残っているお前は、魂壺から脱出できるじゃろう。」

カンジー 「そんなことしたら、カーン様は!?」

カーン 「わしのことは案ずるな。今は次界卵を見つけることだけを考えるのじゃ。」

カンジー 「カーン様…。」

◆   ◆   ◆

再びポーカード、つり下げられたカンジーの前に現れる。

ポーカード 「どうだ…そろそろ次界卵のありかを話す気になったか…。」

魂壺からまばゆい光が発せられている。

ポーカード 「な、何だ。!?」

ポーカードの持っているカンジーの帽子が光り出す。魂壺の中から球体が現れ、その強い光と衝撃に吹き飛ばされ気絶するポーカード。カンジーは魂壺から脱出する。

カンジー 「…カーン様…。」

カーン 「再び会うとき、お前がどれほど成長しておるか、楽しみにしておるぞ、カンジー。」

カーン、姿を消す。

◆   ◆   ◆

カンジー、流れる涙を拭いて、帽子を拾い、ガスベラスから脱出。タケル達と合流後、バカラ達を追い払うことに成功。

タケル 「カンジー、大丈夫か?」

カンジー 「すいませんでした、ご心配かけて。」

コーラル 「かわいそうに、あいつらに捕まったのね!」

ポーチ 「1人でよく逃げ出せたわね。」

カンジー 「シャーマンカーン様のおかげです。」

タケル 「え…?」

タケルとポーチ、顔を見合わせる。

◆   ◆   ◆

決意の表情のカンジー。

カンジー 「カーン様、お約束します。今の僕にはわからないけど、天使と悪魔が本当に仲良くなれるかどうか、きっと答を見つけだします!」

◆   ◆   ◆

ゼウスの言葉によるナレーション。

ゼウス 「天使と悪魔が共存できる世界は、本当に築けるのか?答はまだ見つからないが、カンジーの瞳は決意と希望に輝いていた…。アラクネの谷は、もう、間近だ…。」

    
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