「おまんらぁ!なめたらいかんぜよ!」(56)…父・893医師のやり方に疑問を持ち、天使属にコンパーチブルしたものの、炎を見ると父親そっくりの性格になる糖衣嬢。父娘2人に色々と振り回されながら、凶悪魔と戦うタケル達。
タケルの暴走運転で反り返った道路から真っ逆様に落ちたタケル達。そこで目にしたのは、墜落した隕石の影響でメチャメチャになっているゾーンの光景。救護活動が行われているのを見て、糖衣嬢は手伝いに飛んでいってしまう。
タケル 「なんだよ〜、俺達だってけが人だぜ〜。」
凹十魔 「なんでもいいから、俺を起こして欲しいブォオ。」
逆さになって、フロントガラスが道路に突き刺さっている凹十魔。
カンジー 「あ、タケルさん、ここ血が出ていますよ。」
タケル 「え、マジ?(腕を見る)」
サイレン音 「ぴ〜ぽ〜ぴ〜ぽ〜。(低い男の声でのサイレン音)」
タケル達の目の前を通り過ぎて、急ブレーキをかける車。外見はまるで護送車のような救急車。中から現れる失投尉。
失投尉 「メーッスッスッスッス!坊ちゃん方、ケガしてメスね。」
タケル&カンジー 「はあ?」
失投尉 「(タケル達をつかんで車の中に放り込みながら)病院へと連行しメス!」
失投尉 「メ〜ッスッス!発射オーライ!」
再び例のサイレン音を出しながら走っていく護送車。
凹十魔 「ブォ、待つブォン!俺を元に戻してってくれブォン!」
護送車が走っていく様子が糖衣嬢の目に入る。
糖衣嬢 「あのサイレン…まさか…。」
◆ ◆ ◆
謎のボロ家につれこまれたタケルとカンジー。手術台と呼ぶにはほど遠い、木のテーブルの上に手を金具で止められ仰向け状態に。うろたえる2人。
失投尉 「メ〜ッスッスッスッス…。」
両手の指を怪しく動かしながらせまってくる失投尉。
カンジー 「うわ…。」
タケル 「な、何すんだ、やめろ〜(汗)!」
失投尉による地獄の手術がスタートする。シルエットでしか確認できないが、関節を変な方向に曲げてボキボキと言わせている模様。
失投尉 「メース!メス!こうしてメスか!?(タケルに)」
タケル 「うわ、うわ、痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
失投尉 「痛いっす!痛いっす!痛いっすか!(といいながら手を休めない。カンジーに。)」
カンジー 「痛ぁ〜い!手が!足がぁああ〜!!!」
失投尉 「お痛いとはすみません!(やっぱり手を休めない。再びタケルに。)」
タケル 「俺はすりむいただけだってば〜!!」
失投尉 「こうです?こうです?こう〜ですか!?(再びカンジーに)」
カンジー 「絆創膏をいただければ、んがぁ!いいですってば〜!!」
掃除機の長いパイプの様なものをそれぞれの手に一本ずつ持つ失投尉。
失投尉 「メ〜スッスッスッス〜!!」
口にパイプを突っ込まれるタケルとカンジー、パイプからは大量の粉薬らしきものが。
もがき声を挙げるタケル&カンジー。失投尉はテーブル(手術台?)の上に立って、容赦なくパイプをタケルとカンジーに突っ込み続ける。
パイプを抜くと、タケルとカンジーの口は薬でいっぱいに。
タケル 「く、くるしぃ〜。」
カンジー 「…にがいでふ…。」
失投尉 「(相変わらず手術台の上でパイプを構えた状態で)り、良薬は、口に苦しともうしメス…。…オペ終了!!!精算しメス…。」
電卓を適当に叩いて、請求書を見せる失投尉。
カンジー 「ご、5000万ゼウス〜!?」
タケル 「は?じっちゃんがどうしたって?」
カンジー 「ゼウスとは、ゼウス様が定められた天聖界のお金の単位です…。缶ジュース一本が120ゼウス…。(大変困ったと言わんばかりの顔で悲鳴に近い声に変わり)5000万ゼウスは、家族4人が5年は暮らせる金額です〜〜!!」
タケルの中で、缶ジュースを買うタケル自身のイメージ&一軒家に済むバカラ達4人の様子のイメージが。
タケル 「は!?そんな大金持ってるわけねえだろ!」
失投尉 「なんと!?お支払いいただけない!?」
タケル 「あったりめえだ!」
後ずさりする失投尉。
失投尉 「せ…せせせせせ先生〜!893医師先生〜!お願いしメス〜!!」
タケル&カンジー 「は?」
と同時に、白いカーテンの向こう側にあったドアが蹴破られるようにして開く。ビックリしてそちらの方を見るタケル&カンジー。
893医師 「おう、金が払えんちゅうてか?お客さん、なかなか面白いこと言わはりますのぉ。」
カーテンの端から、薄暗いながらも顔を見せる893医師。
失投尉 「メ〜スススス!!」
タケル 「え…?(汗)」
カンジー 「ぼ、暴力病院〜!」
タケル達の前の床にあぐらをかいて座る893医師。
タケル 「誰が来たって払えねえものは払えねえんだよ!」
893医師 「やれやれ…わしらも甘う見られたもんじゃのう…。」
目を潤ませておびえるカンジー&相変わらず威勢のいいタケル。
失投尉 「先生〜!ここはひとつ、我々渡世人の恐ろしさをわからせた方がよろしいかとぉ!」
893医師 「兄ちゃんら…堅気の衆じゃ思うて優しゅうしとったら、ずいぶんなめた口きいてくれよるのう…。あんましへのっちょると、せっかく治った傷が悪化することになるが、それでもかまわんかね?」
カンジー 「ご、ごめんなさぁ〜い!!!」
タケル 「おもしれえ、やるか!?(トライブレードを構える)」
カンジー 「た、タケルさん〜!(悲鳴に近い声で)」
失投尉 「ス〜〜〜〜!!(興奮したのか叫ぶ)」
893医師 「ふっ…素人さんの怖い者知らずには負けるのぉ…。」
立ち上がる893医師。しばらくの沈黙の後、いきなり顔をでかくして迫力抜群に迫りながら。
893医師 「おまんらあ!なめたらいかんぜよ!」
タジタジになるタケル&カンジー。そこへ糖衣嬢が入ってくる。
糖衣嬢 「お父様ぁ〜!!」
タケル 「ん?」
カンジー 「糖衣さん…。」
糖衣嬢 「やっぱりお父様でしたのね!」
タケル&カンジー 「お父様ぁ!?」
顔を元の大きさに戻す893医師。
893医師 「ふっ、久しいのう、糖衣嬢…。」
糖衣嬢 「お父様!口は悪くても名医の誉れ高かったお父様が、何故こんなあくどい『ぼったくり』(ここかなり強調)商売を?」
893医師 「わしゃあのう、悪魔本来の生き方に目覚めたんじゃ。悪魔と天使が仲良しこよしの世の中なんてうんざりよ。…糖衣嬢、おめえもわしの娘なら、悪徳看護婦になって、このわしを手伝わんかい!」
糖衣嬢 「そんなのいやですの!あたしは明るく正しい看護婦でいたいのですの!」
タケル 「糖衣…。」
カンジー 「糖衣さん…。」
涙を流す糖衣嬢。
893医師 「ふん…口では何ちゅおうと、おめえの体にはわしの遺伝子がきっちり組み込まれとるんじゃけえのぉ。」
糖衣嬢 「!!」
ライターを取り出す893医師。蓋を開けて火を付ける。うろたえる糖衣。
タケル 「?…どうした糖衣!?」
カンジー 「糖衣さん!」
893医師 「(ライターの炎を通して糖衣嬢を見ながら語る。)お前はわしの娘じゃ…悪魔属の本性を見せてみんかい、コラ!!!」
次の瞬間、目を開けた糖衣嬢は目つきが悪くなり、帽子の羽根も白から黒になっている。
糖衣嬢 「う〜、うううう〜、う!!」
タケル達の方をキッと見る。うろたえるタケル達。そこへどアップの糖衣嬢。
糖衣嬢 「おまんらぁ!!!なめたらいかんぜよ!!!」
テーブルの上に片足のせて、右腕をまくってげんこつを見せた状態で叫ぶ。
タケル 「おぉ?(興味津々な視線を糖衣のポーズに向ける)」
カンジー 「(たじろぎながら)糖衣さん、どうしちゃったんですか〜?」
糖衣嬢 「うおりゃぁあ!ふんっ!!」
テーブルの上にがに股で飛び乗る糖衣嬢。
糖衣嬢 「どうもこうもあるかい!!おまんらそろいもそろって、どぉたま悪そうなつらしおって!!うちが治療したるけえ、そこに寝るがじゃぁ!」
タケルとカンジー2人同時に治療し(技をかけ)まくる糖衣嬢。
失投尉 「メ〜スッス〜!!」
893医師 「ふん、それでこそわしの娘じゃぁ。」
糖衣嬢 「うぉら!うぉら!うぉらあ!」
まだまだ技をかけられまくるタケル&カンジー。そこへ凹十魔が突入してくる。
凹十魔 「ブォオオン!みんな、助けに来たブォ!」
893医師 「なんじゃ!?」
タケル&カンジー&糖衣嬢を乗せて、壁を突き破って脱出する凹十魔。
脱出後も大暴れしようとしている糖衣嬢の腕を片腕ずつつかんでなだめようとしているタケルとカンジー。
糖衣嬢 「くぉ〜らぁ!放さんかぁ〜い!!」
タケル 「糖衣〜、暴れるなって〜!」
糖衣嬢 「ふん!!(タケルの顔面にひじ鉄を食らわせる糖衣嬢)」
のびるタケル。
糖衣嬢 「フーッ、フーッ(肩で息をしている状態)…ウッ!!」
一気に元の状態に戻る糖衣嬢。
糖衣嬢 「はっ!ですの!」
カンジー 「糖衣さん!」
糖衣嬢 「あたし…あたし、また…。」
◆ ◆ ◆
失投尉 「だぁ〜っ!治療費、踏み倒してメス〜!!」
893医師 「フーッ…。」
? 「893医師ぃ〜。」
893医師 「これは、霊断坊主様!」
霊断坊主(右の顔) 「893医師…お前の娘…。」
霊断坊主(左の顔) 「糖衣とかいう娘…。」
893医師 「へぇっ、まっこと糖衣はわしの娘ですけん…。」
霊断坊主(右の顔) 「あの娘、感じる…。」
霊断坊主(左の顔) 「ブライトソウルの持ち主かも知れぬわぁ〜。」
893医師 「なんですと!?」
霊断坊主(右の顔) 「さがせ、ブライトソウル…。」
霊断坊主(左の顔) 「連れてこ〜い、あの娘ぇ〜。」
893医師 「…はっ!」
◆ ◆ ◆
夜。野宿しているタケル達。タケルは昼の糖衣嬢のひじ鉄がしゃくにさわっているのか、鼻に絆創膏はった状態で完全にふてくされ状態。
糖衣嬢 「もうしわけありませんの…。患者さんの怪我を増やすなんて看護婦失格ですの…。」
タケル 「フンッ。(そっぽを向いたままのタケル)」
カンジー 「タケルさん!!…糖衣さんも、そんなに思い詰めないで…。それよりもさっき、893医師のことをお父様って…。」
糖衣嬢 「はいですの…。私の父は悪魔であるということ以外は、生まれも素性もわからない…しかしそのメスさばきは、今日もどこかで奇跡を起こしている、と噂される、天才的な無免許医でしたの…。」
◆ ◆ ◆
回想。夜、竹藪の中、患者に手術を行う893医師の姿。そして彼にメスを渡したり、汗をふいてあげたりしているのは、幼い頃の糖衣嬢。
現在の糖衣嬢 「私はそんな父を心から尊敬していたんですの…。」
雪の降る中、橋の下でたき火をたいて野宿状態の893医師と、彼の懐で一緒に毛布にくるまっている子供のころの糖衣嬢。
現在の糖衣嬢 「そして父も、私に持てる限りの技術を教えてくれたのですの。」
回想中の893医師 「(迫力抜群の顔で)おまんらぁ!なめたらいかんぜよ!…(糖衣嬢にやさしく語りかける)オーケー、言うてみい。」
回想中の糖衣嬢 「うん!おまんらぁ、なめたらいかんぜよぉ。」
回想中の893医師 「よし。さすがは、わしの娘じゃ!」
糖衣嬢を抱きしめる。糖衣嬢も喜ぶ。
回想中の糖衣嬢 「うちもおおきゅうなったら、無免許の暴力看護婦になっちゃるきに。」
◆ ◆ ◆
また別の回想。どこかの建物の中。
水をくんできている糖衣嬢は、部屋の中から聞こえる大きな音に驚く。そして、部屋の入り口の陰に隠れて、893医師の様子を見る。
回想中の893医師 「口答えすなやあ!患者は医者の言うことをだまって聞いちょりゃええんがじゃあ!」
現在の糖衣嬢 「でも成長するにつれ、少しずつ、父のやり方が本当に正しいのかわからなくなってきたのですの…。」
大きくなった糖衣嬢は、置き手紙を残す。
糖衣嬢の置き手紙 「お父様へ…糖衣は旅に出ますの。さがさないでくださいですの。…お父様とは違う道で…でもきっと立派な看護婦さんになってみせますですの。」
◆ ◆ ◆
振り向いて糖衣嬢の話に耳を傾けているタケル。
糖衣嬢 「そして私は、父の元を離れ、天使属にコンバーチブルして、看護婦さんになる勉強をしたのですの。」
カンジー 「炎を見ると性格が変わるのは、お父様の教育を思い出すからなんですね。」
糖衣嬢 「でも、口は悪くても、無免許でも、父は患者さんの治療はちゃんとするお医者様だったんですの。…でたらめなお手当でお金儲けするような父ではなかったのですの…。」
糖衣嬢の方へ向き直るタケル。
タケル 「あのおっさん、『悪魔の真実の生き方に目覚めた』とか言ってたよな?」
カンジー 「でも悪魔だって天使とわかりあえるはずです!」
凹十魔 「その通りブォン!ここに俺様という、生きた証拠がいるブォン!」
タケル 「ま、心配すんなよ。親子なんだから、話し合えばきっとわかりあえるさ。」
カンジー 「そうですとも!」
不安気な顔で空を夜空を見上げる糖衣嬢。
◆ ◆ ◆
タケルとカンジーと凹十魔は眠りについたが、糖衣嬢だけは眠れない様子。やはり夜空を見上げている。
糖衣嬢 「(うつむいて)お父様…。」
失投尉 「メ〜ッスッスッス!!やはり親子の情とはぁ、断ちがたいものでぇ〜ございメスなぁ。(後ろからそっと近づいて)メ〜ッスッスッス、スッ!」
糖衣嬢を捕らえる失投尉。
893医師のボロボロの家の前。座布団に腰掛けてライターの蓋を開け閉めしている893医師のもとに到着する失投尉。
失投尉 「メ〜ッスッスッスッス!」
◆ ◆ ◆
カンジー 「んがっ!!」
タケルの寝相で足がぶつかり、目を覚ます。呆れた目でタケルを見るカンジー。
カンジー 「あ〜…あれ?糖衣さん!?タケルさん、起きてくださいよ!!」
◆ ◆ ◆
凹十魔に乗って移動中のタケルとカンジー。
凹十魔 「ブォオオオオ!!」
タケル 「糖衣がさらわれた?おやじのことが心配で、自分から出かけてったんじゃねえのか?」
カンジー 「それはありえません、あの糖衣さんが救急箱を置いていくなんて!」
◆ ◆ ◆
893医師がいる家の地下室。
糖衣嬢 「はっ!ですの!」
ベッド(?)に張り付け状態にされた状態で気付く糖衣嬢。
失投尉 「メ〜スッスッスッス〜!」
糖衣嬢 「ここは?…お父様!!」
893医師の後ろから姿を現す霊断坊主。
霊断坊主(左・赤い顔・暖) 「娘ぇ〜。」
霊断坊主(右・青い顔・冷) 「お前がブライトソウルの持ち主か…。」
霊断坊主(左) 「確かめてくれるぅ〜。」
糖衣嬢 「ブライトソウル?」
失投尉 「ブライトソウルとは、超聖神の輝きを持った、太陽に匹敵する、無限エネルギー体でありメス。持ち主が高潔であればあるほど、宿した魂のパワーも高まりメス。悪魔属から天使属にコンバーチブルしたお嬢さんこそ、その持ち主である疑いが濃厚なのでありメス。」
糖衣嬢 「お父様…。」
ドスのようなものをさやから抜く893医師。糖衣嬢の上にかざす。
霊断坊主(右) 「やれい!」
霊断坊主(左) 「893医師ぃ〜。」
893医師の顎のところに描かれている2重丸の様なマークが光り出し、893医師はドスからビームのようなものを出す。すると、糖衣嬢の胸から、フィルムのようなものが次々と飛び出していき、イメージを描き始める。
失投尉 「??」
霊断坊主(両方) 「こ、これは!」
出てきたイメージは、ニコニコ顔のチューリップ。それらが輪になった中心にいる糖衣嬢。
糖衣嬢(イメージ中) 「(手を叩いて)は〜い、みなさ〜ん。お行儀良く並んでくださいですの〜。」
糖衣嬢(別のフィルムのイメージ) 「心配しなくても大丈夫ですの、お父様から教わったテクニックで、すぐになおして差し上げますの。」
糖衣嬢(また別のイメージ) 「(バックミイラ達とともに楽しそうに)ルン、ルン。ルン、ルン。」
失投尉 「だぁ〜っ!だぁ!だぁ!うわ、これ、ブライトソウルとは違ったりメス〜!!」
糖衣嬢(また別のイメージ) 「あたしのお父様は、それはそれは立派なお医者様ですの。あたしもお父様に一歩でも近づけるように、一生懸命お勉強してますの〜。」
寝かせられている糖衣嬢の嬉しそうな顔に釘付けになる893医師。
子供の頃の糖衣嬢(イメージ中) 「お父ちゃん!」
ハッと声のするイメージの方を見る893医師。そのイメージが目の前に。
子供の頃の糖衣嬢(イメージ中) 「うちもおおきゅうなったら、お父ちゃんみたいな暴力看護婦になっちゃるきに〜。」
そのイメージに触れようとして近づく893医師。
霊断坊主(左) 「やめ〜い。」
目の前でイメージがバラバラになる。
霊断坊主(右) 「もうこの娘に用はない。」
霊断坊主(左) 「893医師ぃ〜。」
霊断坊主(右) 「始末しろぉ!」
893医師 「じゃ、じゃけんど…。」
霊断坊主(右) 「聞こえぬか!」
霊断坊主(左) 「我が命令は、ぜったぁ〜い。」
幸せそうな顔で気を失っている糖衣嬢。それをとまどいの目で見つめる893医師。
◆ ◆ ◆
タケル達がようやく到着。
凹十魔 「ブォオオン!」
家の中に入るタケル。真っ暗な部屋。
タケル 「誰もいないぞ?」
カンジー 「(あとから走って入ってきて耳を床に当てて)地下から声が!」
タケル 「地下ぁ?」
◆ ◆ ◆
再び地下室。
霊断坊主(右) 「何をしている!」
霊断坊主(左) 「やれぇ〜い。」
893医師、手を糖衣嬢のへと持っていく。が、明らかに動揺している模様。顎のマークが光り、苦しいのか、頭を抱える。
霊断坊主(両方) 「893医師!!」
? 「やめてください!!」
霊断坊主(両方) 「!?」
見上げる霊断坊主。そこには、地下室の扉を開けて立っているカンジーの姿が。
霊断坊主(両方) 「お前は〜!」
と同時に、天井が破壊され、タケルが武装翔束で突入。トライブレードで失投尉を一撃!壁にたたきつけられる失投尉。
失投尉 「メス〜〜!!!…もうダメッス〜。」
893医師 「お、おぬしはぁ!」
タケル 「目を覚ませよ!893医師ぃ!!」
トライブレードの一撃をくらわせるタケル。893医師は床に倒れ、その拍子にライターがポケットから落ちる。
霊断坊主(両方) 「まずい〜〜。」
タケルの攻撃を上に上がりながらかわし、そのまま天井をすり抜けていく霊断坊主。
タケル 「逃がすか!!」
カンジーは、落ちたライターを拾い、糖衣嬢の元へ。
カンジー 「糖衣さん!」
糖衣嬢 「はっ!カンジーさん…。」
カンジー 「これを見てください!」
大きなライターの蓋を片手で開け、もう片方の手で火を付ける。
糖衣嬢 「!…う〜…うぉああああ!!はあっ!!」
再び凶暴化し、手首を固定していたベルトを引きちぎって立ち上がる。
カンジー 「と、糖衣さん!(と喜んだのもつかの間、糖衣が横を通り過ぎる際の勢いで、立ったまま高速横回転)。」
そのまま雄叫びを挙げながら893医師の元へ一直線の糖衣嬢、893医師に思いっきりパンチを食らわせる。
カンジー 「(滅茶苦茶にあわてふためいた表情で)おぉおおおおお!?」
糖衣嬢 「うぉおりゃああああ!!うぉら!うぉら!うぉら!…。」
893医師を押し倒した状態で連続パンチを食らわせる。
カンジー 「(パンチが一発とぶ度にリアクションを取る)…あの、糖衣さん…もうそのくらいで(汗)。」
それでもしばらくパンチが続く。やがて、パンチの嵐が止み、893医師が糖衣嬢を見上げると、糖衣嬢の目には涙が。
893医師 「糖衣嬢…。」
糖衣嬢 「うっ、うっ…このぉ、バカおやじぃ〜〜!!!」
糖衣嬢がパンチをしようと構えた時に、涙が一粒893医師の顎の謎のマーク(これで操られていたと思われる。)に落ちる。
パンチを繰り出す糖衣嬢。しかし、そのパンチは893医師が片手で受け止めた。
糖衣嬢 「!!」
893医師 「糖衣嬢…おぬしのパンチ…効いたぜよ!!」
そして起きあがって、あぐらをかいて向かい合う2人。
糖衣嬢 「お父ちゃん…。」
893医師 「娘!!」
一度抱き合い、一度顔を見合って、再び抱き合う2人。
その姿を見て、「ウン!」っと両手でガッツポーズを取るカンジー。
◆ ◆ ◆
外で霊断坊主と戦っているタケル。
タケル 「うわっち〜!この…くそ〜!」
霊断坊主の氷のビームと炎のビームをかわすので精一杯なタケル。
凹十魔 「ブォオ!あいつ、以外と強いブォ〜!」
霊断坊主(両方) 「我は凶悪魔・霊断坊主〜。」
霊断坊主(右・暖) 「三面鬼神を倒した…。」
霊断坊主(左・冷) 「天使属の小坊主とはぁ〜。」
霊断坊主(両方) 「お前かぁ〜!!」
冷暖両方のビームをいっぺんに出す霊断坊主。
タケル 「うわああ!…(右の羽根が燃えていて)アチチチ!…(左の羽根が凍っていて)チメチメチメテ!」
凹十魔 「凶悪魔には、並大抵のパワーじゃ勝てないブォン…。…?」
謎の雄叫びを聞いて驚く凹十魔。
893医師 「とぉあ!」
糖衣嬢 「うぉぁああ!!」
現れた2人が一斉に霊断坊主にパンチを食らわせる。
タケル 「?何だ?」
893医師&糖衣嬢 「(2人でお揃いのポーズを決めて)なめたらいかんぜよお!」
タケル 「?」
霊断坊主(右) 「893医師…!」
霊断坊主(左) 「裏切る気かぁ〜?」
893医師 「裏切るじゃと?怪しげな術で、わしと失投尉を操っとったんは、どこのどいつじゃあ!!」
糖衣嬢 「父ちゃんにあんじょうしてくれた礼、百億倍にして返してやるけぇ、覚悟しぃやぁ!」
893医師&糖衣嬢 「(同時に飛び上がり)なめたらいかんぜよぉお!!(Wキックで、霊断坊主にひびが入る程のダメージを与える)」
悲鳴を上げる霊断坊主。そして、霊断坊主のそれぞれの頭に乗り、パンチを食らわせまくる2人。
カンジー 「あ〜…。」
凹十魔 「あの2人…並大抵の親子じゃない…。」
カンジーといっしょに呆気にとられて見守る凹十魔。
糖衣嬢&893医師 「うぉりゃ!うぉりゃ!うぉりゃ!…。(パンチを食らわせまくる2人)」
タケル 「つ、強ぇえ…。よ〜し、俺にもやらせろぉ〜、トライブレード〜!!」
糖衣嬢&893医師 「とぉっ!」
霊断坊主の前に2人揃って着地する2人。その後ろでは、霊断坊主がトライブレードを受けて爆発しているという、絵的に妙にキマった状況に。
倒された霊断坊主の跡には魔黒石が残る。
タケル 「よっしゃあ!!」
糖衣嬢&893医師 「(腕を合わせて)なめたらいかんぜよぉ!!」
糖衣嬢 「(そのまま元に戻って)!お父様…はっ!あたし…。」
893医師 「うん!(笑顔でうなずき、笑い出す)ハッハッハッハッハ…。」
タケル 「ハハハハハ!」
カンジーも凹十魔も笑い出す。一人キョトンとしている糖衣嬢。
◆ ◆ ◆
夜が明けて。昨日同様、隕石による被害の復興作業がおこなわれている。
893医師 「フン!あげな術に操られるなんぞ、わしもまだ修行が足りんわ…。」
カンジー 「霊断坊主は、糖衣さんを失った893医師さんの寂しさにつけこんだんですね…。」
失投尉 「糖衣さん!また先生と一緒に暮らしてあげてくださいよ!先生は、ずっと…。」
893医師 「じゃかぁあしゃあ、黙っとりゃあ!!」
タケル 「どうするんだ、糖衣?(笑顔で問いかける)」
糖衣嬢 「(決意の表情で)お父様、ごめんなさいですの。あたし、まだタケルさん達をお手伝いしなければなりませんの。もっとお勉強して、立派な看護婦になったら、必ず帰りますの。」
893医師 「ふん…お前はお前の道を行くがええ…。」
背を向けて去っていく893医師。
糖衣嬢 「だから、それまで待っててくださいですの〜!!」
失投尉 「先生〜!(追いかけようとして立ち止まり、糖衣の方を振り返る。)」
カンジー 「本当にいいんですか、糖衣さん。」
糖衣嬢 「はいですの。」
タケル 「じゃあ決まりだ!行こうぜ!!」
凹十魔に乗って出発するタケル達。笑顔に満ちている糖衣嬢。
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