非ユークリッド幾何学の定義
ユークリッド幾何学の仮定をE1,E2,E3,E4,E5とします。E5は有名な第5公理(平行線公理)です。ユークリッド幾何学が公理系ならば、これらの仮定はすべて公理であり、すべて真の命題です。これに対して、非ユークリッド幾何学というものが考え出されました。E5の否定命題を¬E5と表記しますが、この¬(ノット)という記号は否定を表しています。
非ユークリッド幾何学とは、最初の4つの公理E1,E2,E3,E4を満たすけれども、5番目の公理E5を満たさない幾何学のことです。実は、この表現は2つの意味を含んでいます。1つは、「公理E5を満たさない」を「公理E5の否定を満たす」と解釈する場合です。もう1つは「「公理E5を満たさない」を「公理E5が存在しない」と解釈する場合です。両者は大きく異なります。、
このため、非ユークリッド幾何学の定義は2つあります。1つは平行線公理という真の命題の代わりに平行線公理の否定という偽の命題を仮定に持つ非ユークリッド幾何学(1)であり、もう1つは平行線公理という真の命題を仮定に持たない非ユークリッド幾何学(2)です。
非ユークリッド幾何学(1):E1,E2,E3,E4,¬E5
これは、ユークリッド幾何学の平行線公理の代わりに、その否定を仮定に有する非ユークリッド幾何学です。E1,E2,E3,E4までは真の命題ですが、¬E5はE5の否定であり、真の命題を否定したものは偽の命題です。したがって、このタイプの非ユークリッド幾何学には仮定に偽の命題が含まれているので、矛盾している幾何学です。
非ユークリッド幾何学(2):E1,E2,E3,E4
これは、ユークリッド幾何学から平行線公理を除いた非ユークリッド幾何学です。E1,E2,E3,E4は真の命題ですから、このタイプの非ユークリッド幾何学は無矛盾です。しかし、ここで勘違いしてはならないことがあります。それは、あくまでも仮定は4個だから、これ以上の仮定を増やしてはいけないということです。つまり、E5も¬E5も使用してはならないのです。よって「このタイプの非ユークリッド幾何学は、E5を認める幾何学(ユークリッド幾何学)と¬E5を認めない幾何学(非ユークリッド幾何学)に分類される」という考え方は誤りです。
初期の非ユークリッド幾何学は前者でしたが、現在、後者を非ユークリッド幾何学とする場合が多いようです。しかし、いまだに非ユークリッド幾何学の定義がきちんと統一していないために混乱しているのが現状です。