助かりたくなかったのか 重ね重ねの光彩の縁で (助かりたくなかったのだろう) 西からの風が伝える 影も光沢もない王城の 誰もいない時間だったか 誰かがいなければならない獄舎の そのときを思い出す前に 歳末の駅前の鏡の池に 早速 霜は降りてきて 急に羽ばたきがしたくなったか うぬぼれた魚め いつもなら 高い虚構の枝々だ ほどこうならほどけたはずの 血で茹でた指だ 辿り損ねて何度も行き来する俘囚の 凍った鼻だ あまりにもよそよそしかったね 紐帯 夕べの諍いよりも夕べの雲が重いのは なぜ けっ 解けない謎が溶けてゆくぜ どぶ泥さ 鳥篭が鳥を探すように 魚が漁網を探すように 君は 君を捜し続ける 核心に迫るかのような蟹歩きで 砂場よ 胸像よ 殴打よ お帰りなさい 本当の夜がくる前に お帰りなさい 割れもの扱いの星空のせいで きっと沈没するお伽話のせいで 折り目正しい比喩と その場限りの要約のせいで 君が 君という温かい罠になる その前に |