さっき 短めの鉛筆で 手の中の細い紙に 歌 と 小さく書いた 水底で 石が揺れた 大王が 昼下がり 歌を忘れた小鳥に尋ねた あれは 何だったのか 白い剣と黒い盾が 極北を目指し まっしぐらに 飛んで行った あれは 何だったのか すると 悲しみは剣のように胸を刺すよ と あなたは言った さっき 短めの鉛筆で 手の中の細い紙に 声 と 小さく書いた 水底で 石が揺れた 仕立て屋が 昼下がり 声をなくした小鳥に尋ねた あれは なぜ だったのか 白い針と黒い布が 極北を目指し まっしぐらに 飛んで行った あれは なぜ だったのか すると 悲しみは針のように胸を刺すよ と あなたは言った さっき 短めの鉛筆で 手の中の細い紙に 時 と 小さく書いた 水底で 石が揺れた 学生が 昼下がり 時を違える小鳥に尋ねた あれは いつだったのか 白い爪と黒い本が 極北を目指し まっしぐらに 飛んで行った あれは いつだったのか すると 悲しみは爪のように胸を刺すよ と あなたは言った さっき 短めの鉛筆で 手の中の細い紙に 恋 と 小さく書いた 水底で 石が揺れた あなたは 昼下がり 恋を知らない小鳥に尋ねた あれは 誰だったのか 白い服と黒い影が どこへとも告げず 私の部屋から出て行った あれは 誰だったのか |