外見は緑の蜻蛉で、羽は、震えているから見えなかった。 なだらかな丘の麓の湿った土の黒い中に、ふたつ、みっつ、明るむようにして平らな石があり、そのひとつに赤い手鏡が伏せてある。かつて、あれは、そこにいた、音もなく。 まだ早かったのだ、呼びかけるには。なのに、呼ぼうとした。誰だったか。君だったか。 石の上は、まだ明るく、土も小気味よいほど、黒かったのに、 呼ぼうとする息の (ぶくぶく) 泡は、 (ぷちっ) 弾け、 羽のように乾いた笑い声が私の喉から漏れて、 手鏡を伏せた、 私は、 震える羽 もろともに。 |