これも会社の寮に住んでいた時の話です。
その頃の寮は改装されていて以前の4畳間ではなく、
二部屋の仕切りを取って、10畳近い部屋になっていました。
ドアは部屋の端のほうにあり、ベッドは一番奥に置いてありました。
その日、私は既にぐっすりと寝ておりました。
「たす、たす、たす」
私は部屋の中を歩く足音で、目が覚めました。
・・・あれ? ドアに鍵を掛けてなかったっけ?
・・・・・・そういえば、ドアを開けた音がしなかったよね?
「たす、たす、たす、たす、たす、たす」
足音は部屋を横切り、真っ直ぐベッドの方にやってきます。
「たす、たす、たす」
足音は、ついに私のベッドのところまで来ました。
・・・だれだ?・・・
私が鍵を掛け忘れて、誰か入ってきたかな?
などと、私が思っていると、
「がばっ!」
その足音の人物は布団の上から私に覆いかぶさってきました。
あまりにも思いっきり覆いかぶっさてくるので、
私は同期の誰かが酔って帰ってきて、ふざけてるのかと思いました。
そうこうしてるうちに、その人物は
「ぐり、ぐり、ぐり」
うつ伏せで寝ている私の背中に、あごを押し付けてぐりぐりし始めました。
「ぐり、ぐり、ぐり、ぐり、ぐり、ぐり」
これでもかというほど、執拗に繰り返してきます。
あまりにもしつこいので、腹が立った私は、
「誰だ!この野郎!!」
と、布団を跳ね除けました。
・・・・・・誰もいません。
部屋には布団を跳ね除けている私が、一人いるだけです・・・
「夢だったかな?」
そう思いました。
・・・しかし、背中にさっき「ぐりぐり」された感触が生々しく残っています。
何かが、この部屋にいたのです。
いったい何が、私の部屋を訪ねてきたのでしょう・・・