隣人

これは私が湯沢に住んでいたときの話です。

その頃、私は会社の借り上げのアパートに住んでいました。
建物は1階が駐車場で、2階がアパートです。
アパートは、階段で2階に上がり、突き当りの部屋まで廊下が続いています。
部屋は3つあり、端から不動産屋、私の部屋、隣の部屋となっていました。
廊下の突き当たりにある隣の部屋は、母親と小学生の女の子と男の子が住んでいました。
隣の人とは、挨拶を交わすくらいで、特に親しくしてはいませんでした。

いつの頃からか、隣の部屋から仏壇の鐘の音が聞こえるようになりました。
・・・はて、何で鐘の音がするんだろう?
ちょっと、疑問には思いましたが、あまり気にも留めていませんでした。

鐘の音がするようになってから、何日か経ったある日。
夜、いつものように布団に入って寝ていると、
「ダン!ダン!ダン!」
元気よく階段を上がってくる音がします。

誰だろう?こんな時間に。

すると階段を上りきったその人は
「ダダダダダダダダ」
廊下を走って奥の隣の部屋の前まで走っていきました。

・・・だれだ?こんな時間に迷惑な・・・

そして、その廊下を突き当りまで走っていったあと、
「ダン!ダン!ダン!」
また下から階段を上がってくる音がします。

???

「ダダダダダダダダ」
また廊下を走る音がします。

「ダン!ダン!ダン!」
「ダダダダダダダダ」
何度も、階段を上がったり、廊下を突き当りまで走ったりする音が繰り返されます。

ただ、廊下の突き当りから階段に向かって走ったり、
階段を下りていく音は全然しません。
ひたすら奥の部屋に向かっていく音がするだけです。
私は、以前住んでいた家のように「なにか」が、歩いているんだろうなと思いました。
それ以来、その音は何日か聞こえることがありました。

そんなある日、私は家賃を払いに大家さんの所に行きました。
鐘の音が気になっていた私は、大家さんに聞きました。
「隣の部屋から、毎日、鐘の音がするんですが・・・」
すると、大家さんは、
「あ〜、隣の部屋の女の子が、事故で亡くなったんだよね〜」

・・・

あの、階段や廊下の足音は死んだ女の子だったんでしょうか・・・?

それからしばらくして、親子は引っ越していきました。


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