その後、村は三年もの日照りが続き、多くの農作物にも被害が及び
    多くの者が食料難で飢えに苦しみ心は荒んだ。
    
     ただ、小高い丘のサクラの木は、今年も見事な花を咲かせていた。
    
     飢餓に困った村人は誰れ言うことなく、このサクラの木の下に集まった。
     みなが集まった時、一人の若者が何気なくサクラの木の根っこを見ると、
    壺の蓋が頭をのぞかせていた。
     不思議に思って蓋をとると壺の中から泉のごとく不思議な智恵の種が
    湧き出てくるではないか。
     村長は、この智恵の示唆を大変ありがたく思い、今までのことを教訓に
    政に精進した。
    
      豊かな時こそ、先人たちの英知をしのぐ、次の備えが大切なこと。
     村人の心が1つになり新しい工夫を早くこらせば、どんな苦労でも
     実を結び、すさんだ心も癒される。
     
      見事に咲いたサクラの花のように、やがては実を結び、実が熟す頃、
     子ども達がやって来て、おいしい実を仲良く分け合えば、楽しい思い出や
     新たな友情が芽ばえてくる。

     なるほどと、
      お殿様はこの話にえらく感心して、
       「国表に帰ったらさっそく民の創意を結集して、壺をはずさず
        和のある心を大切にする政をしょう」とサクラの老樹に誓った。
      そして、この話をした老婆には、たくさんの褒美をとらせたと。

    その後、欲張りじいさんどうしたかつて?
              大判小判を探しに旅に出たが帰らなかった。
   
    それでは、
     花を咲かせたじいさんとばあさんはと
うと、
            二人は村を出て行ったが、誰も行き先を知る人も居ない。
      ただ風のうわさによると、毎年サクラの咲く季節になると、
     楽しそうなじいさんとばあさんの笑い声が、南から北えと心の花びらにのって
      聞かれるとの。
      あなたもサクラの咲く頃、サクラの木の下で一度耳をすましてごらん。
               何か聞こえてくれるかも知れない・・・・・・・・・。 

                                            おしまい



      この絵本のサクラの苗木が17年間育った原木を
                     小布施町の「了庵」のオープンガーデンで見れます。


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