トラブルは、よく見れば解決する?(歯科医師と技工士の永遠のテーマ)
歯科医師「このクラウン口腔内で合わないんだけど?・・・再生?」
技工士 「模型上ではピッタリなんですけどね?・・・なんででしょう?」
今日もこんな会話が日本のどこかで交わされていませんか?


歯科医師も技工士もこんな会話が一番苦手ですよね
もちろん患者さんだって「今日セットじゃなかったの?・・・・
そんなにバリバリ削らないと歯が入らないの??
ごちゃごちゃ揉めているけど、私の歯は大丈夫?トラブルになったの??」
などなど患者さんから見ても不安になり、歯科医院の技術力に対する
イメージダウンですよね
 
私が新人の歯科技工士の頃
自分の作った補綴物のセットに立ち会った経験をお話しますと
調整しても調整しても、上手く入らないクラウン
あんなにピカピカに研磨したクラウンの咬合面が
見るも無残に削られてしまう現実
もちろん、スムーズにセットできる補綴物もありますがその確率は低く
冷や汗と「なんでだろ?」との思いでいつも悩んでいたように思います。


その結論を言いますと 「見えてない!!」 答えは単純なんです
模型上でコンタクトがキツイものは、口腔内でもキツイ
模型上でユルイものは、口腔内でもユルイ
模型上でブリッジがガタツクものが、口腔内でピッタリくるはずもありません。
※本人は一生懸命作ったので、上手く出来たと思っているんですが・・・
※技工上のトラブル解決策なので、印象・模型の問題は棚上げしてあります。
 (まずは、技工士サイドから解決できる点から進めたいと思います)


つまり、初心者には模型上の不具合が見えないんですよ
私も新人の技工士さんに「これではダメだよ、分かる?」って言っても
どこがどうダメなのか見えないんですね
「ちゃんとやったんですが・・・」って返事が返ってきます。
「この所よく見て!隙間が見えない?、キツクない?」って言われても
「そうですか?・・・こんなもんじゃないんですか?」って納得できない
表情の人が多いですね


「いい適合の感触はこんな感じ」
「顕微鏡で見てごらんこの気泡が不適合の原因だよ」
「これは、埋没材の昆水比ミスからくる不適合だから再生しないと無理だよ」
「ちょうどいいコンタクトの強さはこんな感じ」
「このブリッジ一見模型上には入ってはいるけど、口腔内には入らないよ」
顕微鏡を見てもらったり、強弱の感触を確かめてもらったり
いい物と失敗作を比較検討しながら、観察・考察しないと
本物を見る目は養われないような気がします。(どの職業も同じでしょうが)


ある歯科医院に伺った時の話なんですが
「ナビデンタルさんで作ってもらった補綴物物はいつも調整が少なくってセット
 が楽しみなんだけど、以前の技工所さんはバラツキが多かったんだよね
 なんでだろうね?」って聞かれので
「ウチは調整が少ないように作っているからなんですよ
 チェアータイムを短くするために模型上の調整に時間をかけてるんですよ
「顕微鏡での確認作業や最終段階での口腔内を想定してのチェックとか
 作業工程でのちょっとした所を丁寧に仕上げるのって時間かかるんですが
 模型作りから完成まで 小さな積み重ねだと思いますよ
 技工ってホント 作業工程が多いのでちょっとしたミスが命取りですもんね」
とお答えしました。
もちろん、確実な補綴物を作るためのワックス・埋没材・金属などの多様な材料
の管理システム作りが重要となるでしょう。


適合・コンタクト・咬合・清掃しやすい形態・自然な色など
補綴物を見る目ができるまでは長い年月がかかると思います
もっと言えば、「これが完璧な補綴物」なんて無い世界じゃないでしょうか
※最近私も、どうしても模型にピッタリこなくって4回もろー着をやり直しました。


補綴物を少ない調整でコンスタントにセットできるようになると
先生方からも信頼され、なんらかのトラブルがあっても
「アンダーカットの大きい歯だったから印象が歪んでしまったかな?」
と逆にフォローしてもらったり
「個歯トレーを使った症例はトラブルが無くって安心だね」と言って頂いております


個歯トレー&各個トレーの印象はトラブルが少ないですね
すべての症例に個歯トレー&各個トレーでの印象を採用するのは
大変かもしれませんが、
多数歯の印象には、トラブルが少なくかなり有効なシステムになると思います
個歯トレー印象の場合、試適を省略できるケースも少なくありません
個歯トレーを作る費用や時間が無駄のように思われるかもしれませんが
印象の確実さや、短いチェアータイムでのセットが約束されていると思うと
診療システムの1つとして採用する価値は高いと思われます


「個歯トレー印象ってめんどくさいって思っていたけど、イザ使って見ると
 多数歯の補綴物の場合、不適合の時の切断とか再ろー着がなくなって
 自信をもって診療に臨めストレスが無くなりましたね」
これは、個歯トレーを採用して頂いた先生の談話です


個歯トレーもマージンが合って無いと個歯トレーの意味が無いので
くれぐれもマージンの合った個歯トレーを使用して下さい
即時重合レジンって意外に収縮しています、内面のスペースなど
考慮された個歯トレーを使って印象して下さい
個歯トレーから模型をはずす場合、支台歯が折れる事がよくあります
手馴れた技工士さんに外してもらいましょう