第171回国会 厚生労働委員会 第18号(抜粋)
平成二十一年六月二十三日(火曜日)

○小池晃君
 最後に、介護休業の問題をお聞きしたいんですが、NTTのリストラ裁判で、年老いた両親を介護すべき事情があったにもかかわらず、北海道の苫小牧から東京へ配置転換された原告について、今年の三月に札幌高裁が、育児・介護休業法二十六条に反する人事権の濫用は違法であるという認定をいたしました。
 NTTでは二〇〇二年に大リストラやりまして、十一万人追い出して、五十歳退職、再雇用を選択しない継続雇用者に対しては、まさに嫌がらせ、見せしめだと思いますが、異業種転換、遠隔地配転、これを続けております。
その中には、家族的責任を持ち、家族の育児、介護をしなければいけない人、それなのに単身赴任を強いられた、たくさんの困難を余儀なくされている人たちがいらっしゃいます。
 例えば、山形県のAさん、五十八歳ですが、二〇〇三年五月から六年間東京に単身赴任させられて、実のお母さん八十五歳は週三回デイケアを受けている。看護師だった妻が退職して介護に付いたけれども、妻は心労から精神疾患になっている。あるいは、秋田に住むSさん、二〇〇三年四月からやっぱり六年間埼玉に単身赴任で、同居の義理のお父さんが認知症で寝たきりで、近所に住んでいる八十歳の実のお母さんが介護に行っていると。
ところが、豪雪地帯だから本当大変な苦労だと言うんですね。まさに制裁としか言えないような配置転換をいまだにやめていません。飯野和子さんのケースでは、高崎から埼玉県の和光市に配転させられて、片道二時間以上の通勤を七年間にわたって強いられて病気になってしまうという事態も起こっておりまして、まさにこれは人権問題だという怒りの声が上がっています。
 ILO条約勧告適用専門委員会は、二〇〇二年に日本政府に是正を求める報告書を出している。その中でこう言っているんです。日本政府は労働者の家庭的責任について配慮したと報告しているが、労働者の異議申立てが無視されている。
労働者に、仕事を続けるのか家庭責任を果たすのかという選択を強制すべきではないとして、転勤の強制の慣習を見直せというふうに求めております。
 このNTTのように、仕事を取るのか家族を取るのかという選択を迫って労働者に言うことを聞かせようと、これ言語道断だと私は思うんです。現行の育児・介護休業法の二十六条には労働者の配置に関する配慮というのがあるんですが、
ここでは事業主は配慮すればよいということで、合意は必要としておりません。
 大臣、企業に対してやっぱり社会的ルールが必要だと、規制が必要だと私思うんです。やっぱり、家族的責任を有する労働者の配転については本人同意を条件とするような、これは見直し、法律に明記していくということでやるべきではないだろうかというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(舛添要一君) これは先ほどの川合さんとの議論とも若干重なってくるんですが、労働契約法上、配置転換、その権限は事業主にあるわけですね。片一方で、育休法の二十六条では、家族の介護とか子供の養育について配慮義務がある。
じゃ、どうなのかといったときに、今の法律論的に言うと、同意までを要件とすることはかなり厳しいと思います。だから、指針において、配慮義務について本人の状況をしんしゃくしなさいという言葉までは使ってあるわけです。
 だから、これは、労働契約法というのは基本的に働く人と事業主の間の契約であるわけですから、そこにどこまで国家が介入できるかということについて、私はむしろ法律で規制するというより、配慮義務にとどめておいたりしんしゃくという言葉を使っているけれども、しかしやっぱり社会全体の合意として、
そういうこともきちんとやれないような企業は社会的責任を果たしていませんよと、企業のイメージは相当ダウンしますよと、働く人を大事にしないような企業は先行き真っ暗ですよと、そういう合意ができることの方が先じゃないかなという気がしますので、これは制度が先かどうか議論あると思いますが、今言った問題点があるということを申し上げて、気持ちは非常に小池さんに近いんですけれども、私の立場ではそこまでの御答弁にしておきたいと思います。

○小池晃君 気持ちは近いと言っていただいたのでそれを是としたいというふうには思いますが、しかし、やっぱり私は、企業の社会的責任というのを社会的に問うていくというのは当然なんだけれども、実態を見ていただきたいんですよ。もう本当に無法なんですよ、
企業というのは。やっぱり枠組みかぶせないとやらないんですよ、日本の大企業の行動というのは。
 だから、私はそういう意味では、もちろんそういう社会的責任を問うていく大きな、労働組合も含めたやっぱり国民的な議論というのは必要だというふうに思いますが、今の企業の行動について一定の歯止めを掛けるルールをつくっていくというのはやっぱり政治に課せられた責任であるというふうに思っていますので、是非この点でも、これは次の課題になっていくかと思いますが、前向きにこれは進めていただきたいというふうに思っております。
 全体としていろんな問題点がある法案ではあるんですが、一定の改善ですので、まだまだ重要な解決すべき点が残っていますので、引き続きその解決に当たっていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
* 第171回国会・参議院会議録・厚生労働委員会 第18号 全文