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大江戸死体考―人斬り浅右衛門の時代.
氏家 幹人


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氏家先生の興味は衆道から不義密通を経て今度は死体になったみたいですわ。
御江戸には死体がゴロゴロしてらっしゃって、水死体なんか珍しくなかったみたい。
いやん、私、川の近くに暮らしてるんですのよ。
この川にも死体が浮いていたりしたのですね…。
内容は江戸時代に既に存在した検死のマニュアルの事から
様(ためし)斬り、据物師山田浅右衛門の家業と副業の薬製造、弟子のアルバイト
などなど、広いのか狭いのか分かりませんが、
得意の史料集めを駆使して膨大な史料を使って色んな角度から
江戸における死体の扱い、それにまつわる人々の話を検証しています。

浅右衛門の副業であり主な収入源である薬の製造にも関わる話ですが
江戸の頃には人の内臓がよく効く薬であると信じられていたのは事実のようです。
(浅右衛門は人間の肝から薬を作って高く売りさばいていたのです)
寅年の子供の肝がイイとかで子供が生きたまま内臓えぐられたとか、
結構生々しい話が残っています。
「生肝(なまぎも)」を「いきぎも」と読み違えた事からこんな陰惨な事件が起きたらしいです。
健康ブームって恐ろしいね!(違)


人形はこたつで推理する.
我孫子 武丸


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『かまいたちの夜』の我孫子武丸氏です。つっても、ゲームやったことないんですが。
腹話術師が探偵役…と思いきや、人形が探偵なんですね。
しかも人形が推理することは、人形使いには分からない。
そう、腹話術師は二重人格だったのです!
なんかあやつり左近を連想させますが、こっちの方が面白いですよ。
(身も蓋もない…)
事件解決に必要な情報は全て腹話術師も聞いているけど、
でももう一つの「人形」の人格の方しか犯人が分からない。
情報の整理の仕方が人格によってかたよってるんですね
探偵役が人形を介して犯人を告発するのとは違うんです。

主人公の妹尾睦月(通称おむつ)と腹話術師の朝永嘉夫の
これからの関係も見逃せないっつーか、これがメインか。
主人公・腹話術師・人形の3人(?)の会話が楽しいですよん。


芭蕉魔星陣.
井沢 元彦


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自分で買ったんじゃありません、兄の本棚にあったのです。
どうも井沢元彦好きの父が買った本らしいです。
うちは母以外みんな書痴で、本棚は本でいっぱいです。
『陰陽道の本』を父とダブって買ってブルーになる時も。

井沢元彦というと『逆説の日本史』が有名ですが、
この小説はその井沢元彦の蘊蓄っぷりを幻想時代小説にしたら
どんな風になるかを本人が実践してるかのようです。
つーか、井沢元彦って本当に怨霊好きなのな!

現代の大学生カップルが何故か心中をして、
気が付いてみると役行者の案内で綱吉治世の江戸にタイムスリップ。
その時代に甦った悪の権化怨魔皇帝を倒すために、
2人は俳句を趣味にする忍者松尾甚七郎(実は松尾芭蕉)と
3人で立ち向かうのだった…というかなりイッちゃった話です。
うさんくさい話が好きな人(私だ!)には面白いと思います。


依存.
西澤 保彦


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キャンパス四人組の酩酊推理シリーズの最新作。視点はウサコ。
『スコッチゲーム』のタカチに続いて、今度はタックの過去が明かされます。
2人の関係にも一応の答えが出てます。

大学の教授の新築パーティに呼ばれたいつもの四人組+他の学生さんたち。
教授の奥さん(再婚)の顔を見た途端、タックは顔面蒼白に。
不審に思ったタカチは教授宅のパテオでタックに事情を尋ねる。
ウサコはうっかり2人の話を立ち聞きしてしまう。
タックの口からは衝撃の告白が。

「あの人は、僕の兄を殺した」
「あの人は、僕の母だ」

なぜタックの母が教授の妻になっているのか。本当にタックの兄を殺したのか。
西澤保彦作品にしばしば登場する「母と息子」というテーマの集大成のような話です。
西澤作品の「母」はユングの「太母」そのもの、という感じでコワイです。

深い闇。自分を飲み込もうとするもの。飲み込まれてしまえば戻っては来れない。
圧倒的な支配。溺れるような愛。無意識の拘束。息子の花嫁になりたい母。
神麻嗣子シリーズにもこのイメージが投影されてるようです。

さてさて、今年(2001年)のゴールデンウィークに、また西澤作品が劇団LEDによって舞台化されます。
今回はオリジナルの話なのです。
私も観に行く予定です。今から楽しみです。
でもお江戸日本橋亭って…どんな舞台になるんだろう……。


ハサミ男.
殊能 将之


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第13回メフィスト賞受賞作。
受賞時、作者が失踪していて編集部から連絡が出来なかったというエピソード有り。
(もちろん、こうして本が出ている以上、連絡はついたわけですが。)

主人公は連続美少女殺人事件の犯人。
死体の喉にハサミが突き立てられていたため、「ハサミ男」と呼ばれている。
第三の犠牲者に目星をつけ、彼女の身辺を調査していた主人公。
ところが、その少女は自分の犯行を真似た、ハサミを突き立てられた姿で発見される。
その上、第一発見者は主人公。
主人公は、第三の殺人の真犯人を捜す羽目になる…。
という、設定からして異色なお話です。

ネタバレに抵触するおそれがあるのでこれ以上詳しく書けません。
あとは、自分で確かめて下さい。損はしません。
傑作です。
私は、完全に騙されました。
最後まで読んだら、必ずもう一度最初から読み直すこと間違いなし。
私は、四回くらい読んだかな…読むたびに唸らされます。
いや、本当にうまい。すごいとしか言いようがない。

この後『美濃牛』『黒い仏』と作品を発表する殊能氏なのですが。
『黒い仏』は…これは、読んだ人なら分かると思いますが…
すごすぎですよね、色んな意味で(笑)。

デビュー後3作目でこんなのやっちゃって大丈夫なんだろうかと思いましたよ。
というわけで、ますます目が離せない殊能氏なのです。