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北村薫 『盤上の敵』 講談社文庫 →詳細 Amazon.co.jpbk1

「この物語は、心を休めたいという方には、不向きなものとなりました。
読んで、傷ついたというお便りを頂きました。」
という北村薫の序文を読んでいたのであまり傷つかずにすみました。
主人公の家に猟銃を持った殺人犯が立てこもり、妻が人質にされた。
妻を救出するため警察を出し抜き、独自に犯人と交渉を始める。
もちろん北村薫なので一筋縄ではいかない話となるのですが…。

しかし、これは確かに痛い。痛い話です。

「円紫師匠と私」シリーズでも「砂糖合戦」「赤頭巾」などで、
人間の悪の心、どす黒い部分を描き出していましたが、
今回はそれを前面に押し出しています。ひりひりと痛いです。
これを書いていた時、作者本人も痛かったんじゃないかな、なんて思ってみたり。

ウィングフィールド『クリスマスのフロスト』創元推理文庫 →詳細 Amazon.co.jpbk1

名探偵コナンの名探偵図鑑にいつかフロスト警部が出てこないかとワクワクしてます。
フロスト警部は重度のワーカホリック。そしてお下品。服装もだらしなくて不潔。
証拠品を集めている同僚にカンチョウかますようなステキ警部です。
舞台はロンドン郊外にある架空の田舎町デントン。治安はよくない。
警察長に媚びを売るのが生き甲斐のマレット警視がフロストをクビに出来ないのは、
なぜかフロストはジョージ十字勲章をもらっている(世間的には)英雄だからなのです。

そして畳みかけるように次々と起きる事件・事件・事件…
フロスト警部は寝るヒマも家に帰るヒマもなければ書類仕事などするヒマもないのです。
ヒマがあっても書類仕事はしませんが。そして今月も残業の申請書類が滞っていく。
とにかく事件が多い上にそれぞれが微妙にリンクしているので混乱する事請け合い。
その事件も、終盤になると1つ1つ怒濤のように片が付いていくのです。
解決の糸口は、フロスト警部のなんの根拠もない直感だったり、運だったり。
そんなダメな警部さんの元に配属されるかわいそうな新人刑事さん。強く生きて欲しいものです。


ウィングフィールド『フロスト日和』創元推理文庫 →詳細 Amazon.co.jpbk1

いしいひさいちが『コミカル・ミステリー・ツアー』(3)で「さあ、どの事件が本筋か当ててみたまえ」
というネタにしてるくらい、前作よりも更に多くの事件が次々に起こります。
連続少女強姦魔も出れば富豪の令嬢も失踪し、公園のトイレで浮浪者が殺されるし
老婦人は蓄えの金貨を盗まれ、あまつさえ刑事が1人殺されてしまうし。
(余談ですがいしいひさいちは本当に沢山ミステリを読んでてビックリです。
 本当に好きなんですね&忙しい中どうやってその時間捻出してるの?といつも思います)

今回もフロストさんは書類仕事をしませんし、お下劣なギャグも絶好調です。
そして次なる犠牲者・部下として配属される新人刑事さんもやって来ます。アーメン。
最後にはフロストさんの事を割と好きになってしまう部下さんなのです。
嫌うよりは好きになった方が仕事上のストレスが軽減するとは思いますが…血迷ってないかい?

そうそう、この『フロスト警部』シリーズは海外ではコロンボのようにドラマ化され、
結構な人気を博しているそうです。こっちでもやってくれないかなあ。
実はミステリーチャンネルでやってるのですが、うちでは見られないからなあ。
うちのケーブルテレビ、ミステリーチャンネルやってくれないかなあ。無理だろうなあ。


ウィングフィールド『夜のフロスト』創元推理文庫 →詳細 Amazon.co.jpbk1

フロスト警部シリーズ第3弾。
デントン警察署はインフルエンザの大流行で、人員が普段の半分。
でも相変わらず事件は畳みかけるように次々と起こるのです。困ったものです。
我らがフロスト警部はインフルエンザからも見捨てられ、元気もりもりです。
そしてワーカホリックフロストに引きずられて家に帰れなくなってしまい、
家庭崩壊の危機に直面する新たな部下は部長刑事ギルモアさんです。

相変わらずお下劣絶好調といった風情のフロストさんですが、
ギルモア氏に非難されて
「ひどい事件ばかり見てると、こういう言い方でもして気を紛らわさないとやってられない」
という内容の事を告白してくれます。
でも、他の刑事さんそんな事言わないから、結局本人がお下劣な事が好きなだけかと。


宮部みゆき 『あやし』 角川文庫 →詳細 Amazon.co.jpbk1

宮部みゆきの時代物ホラーです。
久々に宮部読んだら、すんごい読みやすくてびっくり。
サクサク読めるのに、内容は濃くて、安っぽくも薄っぺらくもない。
一体なんなんだこの作家は〜と、改めて舌を巻いた次第。

宮部みゆきのホラーは、じわりと後から来る怖さですね。
血飛沫ドバーッていう洋物ホラーとは全然性質が違う怖さというか。
私は作品の舞台になっているあたりで暮らしてますんで、実感が湧くので余計怖いです。
そして、怪現象に対して「実はこうでした」という答えが一切示されず、
読者も登場人物と一緒に放り出されてしまうこの尻の座りの悪さもたまりません。
我々に出来るのは「こういうことだったのかな?」と想像するだけです。
現実でも、全てのものに答えが与えられはしませんから、それで正しいんですけど。
それがまた、恐怖を増幅させてます。ああ、うまいなあ…。


乙一 『GOTH―リストカット事件』角川書店 →詳細 Amazon.co.jpbk1

胃腸の弱ってるときに通勤電車の中で読んで、リバースしかけた本です。
や、ほんのちょっと、切り刻まれた女性の死体が木に打ち付けられてただけですよ?
結構想像力が豊かなもんで、その時はかなり喉元まで来ました。
翌日には、ご飯を食べながら読むほど、平気になってましたが(それもどうよ?)

サブタイトルに「リストカット事件」とありますが、それは二本目の短編のタイトルで、
全部で6つの短編が収められてます。
狂気を抱えながら、普通の人間として生きている主人公と、
主人公の狂気を見抜いて、彼としばしば行動を共にする森野夜という少女がメインのお話。
どうも、この森野夜のビジュアルが、花島咲のような絵で浮かんできてしまう…
なんかこう…微妙な電波具合が…こう…ねえ?(同意を求めてどうする)

残酷さや狂気がかなりストレートに描写されてますので、苦手な方にはオススメできません。
それさえクリアできれば、良質な本格ミステリとの出会いを果たすことができます。


北村薫・宮部みゆき『推理短編六佳撰』 創元推理文庫 →詳細 Amazon.co.jpbk1

短編の新人賞の応募作品の中から、最終選考に残った6編を収録した短編集です。
どれもいいんだけど、決め手がない、ということで最優秀賞に該当作なし、となったそうで。
最後に北村・宮部・戸川の選評会談が載っていて、それ読んでから作品読んだのですが、
う〜ん、いちいちごもっとも。審査員はすごいなあ。いや、すごいから審査員になれるのか。

どの短編も確かにすごいんですが、なにか物足りないんです。
途中まですごく引き込まれて読むのに、その割りにラストが拍子抜けだったりして。
ここがアマチュアとプロの境界線なんだろうか、と思いました。
短編って本当に難しいんですね…。


ディッシュ『いさましいちびのトースター』ハヤカワ文庫SF →詳細 Amazon.co.jpbk1

メルヘンSF。別荘におきざりにされた家電製品たちが、御主人の家を目指して旅立つお話。
いつも人が死んだり殺したり殺されたりする話ばかり読んでてすいません。
と、謝りたくなるほどほのぼのメルヘン。心が温まりますなあ。ほんわか。

家電は人の前では動いたりしゃべったりしてはいけないそうです。
そうか…私のいない間、色々言われてそうだな。
たまにはちゃんと埃払ってくれ! とか…。つくづくすまん。


小松和彦『京都魔界案内 出かけよう、「発見の旅」へ光文社知恵の森文庫
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タイトルだけ見て、ものすごく胡散臭いトンデモ系の本だと思ってました。
小松先生すみません。
「魔界」というか「異界」ですね。
京都の神社仏閣その他名所にまつわる伝承を分かりやすく、しかも写真入りで解説してくれます。
民俗学の先生が書いてますが、専門書ではありません。入門としてはとてもオススメ。
出典も書いてあるので、伝承のちょっとした調べモノにも便利かも知れません。
解説は京極夏彦です。そうです勉強って結構楽しいものなんですよねー根気がいりますけど。


乙一『失踪HOLIDAY』角川スニーカー文庫 →詳細 Amazon.co.jpbk1

近所のダイエーで表紙買いをしました。
表紙がいかに大事かというのを現していると思います。中編2本収録。

「しあわせは子猫のかたち―HAPPINESS IS A WARM KITTY」
「しあわせはあったかい子犬」スヌーピーのフレーズですな。
ひきこもりで友達もいない主人公が大学入学と同時に一人暮らしを。
安さの理由は、そこに住んでいた女性が殺されたから。家具もそのままの状態の所へお引っ越し。
しかし、どうやら彼女はまだ「住んでいる」らしく、残された子猫はそれを知っているようで…。
なんともほのぼの、心温まる幽霊譚です。冷静に考えれば怖いはずなのですが。
「幽霊らしい事をしろ」と言われて恨み言でメモ用紙を埋め尽くしてみようとしても、
めんどくさくて途中で止めちゃう幽霊さんは可愛いです。色々切なくて泣けます。

「失踪HOLIDAY」
実母に先立たれ、継父と暮らしている14歳の主人公(ジャイアンの様な性格のお嬢様)が
使用人の住む離れの、女中の部屋に家出をしちゃうお話。
誰も心配してくれないので狂言誘拐を目論み、自分で脅迫状をしたためるお嬢様。
お嬢様がヒジョーにイイ性格してるので、とにかく楽しいです。
継父や継母の自分への思いを知るくだりはちょっとほろりと来ます。


乙一『きみにしか聞こえない』角川スニーカー文庫 →詳細 Amazon.co.jpbk1

乙一が「切ない系」「癒し系」と言われるのはこの辺の作品のためか〜と思いました。
最初に読んだのがホラーで、その後がGOTHなのでいまいちピンと来なかったのです。

「Calling You」
クラスに馴染めない。携帯で繋がりあっている人達がうらやましい。
携帯は持たない。持っても、誰もかけてこないから。でも、携帯には憧れる。
そこで主人公の少女は頭の中で理想の携帯を作り上げました。
白くて、つるつるしていて、着メロは…想像するのは楽しくて、どんどんリアルになっていく。
ある日、存在しないその携帯の着メロが着信を告げます。
恐る恐る少女が通話ボタンを押すと、同じ境遇の少年の、頭の中の携帯からの着信だったのです。
…さて、少女と少年は、どうなるのか。それは読んでのお楽しみ。

この主人公の子の気持ち、分かりますよ。私の携帯、アドレス登録少ないですもん(笑)。
かかって来ても困るので(私はあまり出ない)、極力番号教えないようにしてるとはいえ
やっぱり少ない。…対人スキル高くないので、多いと対処出来ないんですけどね。

「傷―KIZKIDS」
うわああああ、あーざーとーいー。
なんじゃこの「この薄幸で心優しい美少年に萌えて下さい」と言わんばかりの設定は〜!
小学校低学年は守備範囲外なので萌えません!

「華歌」
何かある、絶対ある。騙されないぞ騙されないぞ。
と思いながら騙された。完全敗北なのです。
確かにスニーカー文庫向けの作品ではないです。面白いけど。(あとがき参照)


京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』講談社ノベルス →詳細 Amazon.co.jpbk1

京極夏彦の待望の新刊です。一体前作から何年経ったのでしょうか。
しかし、作中では驚くほど時間が流れていません。
今回は夏の話なのですが、『姑獲鳥の夏』がちょうど1年前の夏。
つまり魍魎・狂骨・鉄鼠・絡新婦・塗仏はすべて1年の間に起きたことなのです。
なんて濃密な1年なのでしょうか。私は御免こうむりたいですねこんな1年。
関口くんでなくてもおかしくなりますよ。

今回の関口君はおかしいです。いや、まともだった事など一瞬たりともないのですが。
いつにも増しておかしい。鬱々としています。なるほどこれでは生き辛かろう。
そして姑獲鳥の時以上になかなか事件が起きないこと。
23年間で4件の連続殺人が起きているのだから、すでに起きてるのだと言えなくはないけど。
現在の事件が起きるまで○百ページ読みました。こうなると、起きた途端に解決する風情に。

今回は珍しく関口君が早々に真相に辿り着きます。榎木津は最初から分かっていたようです。
榎木津が全て分かってるのは、いつもの事なんですが…(それで解決しないところがすごいね)
そして、初めて私も途中で真相に気付きました。
今回は易しいです。そして馬鹿馬鹿しいことこの上ない。狂骨と同等か、それ以上です。
やっぱり「陰摩羅鬼」が全ての鍵を握っています…


恩田陸『PUZZLE』(祥伝社文庫) →詳細 Amazon.co.jpbk1

恩田陸初体験。祥伝社の400円文庫。中編がお手軽に読めるシリーズ。
廃墟の島で発見された4人の男の遺体は死亡時刻も限りなく近いのに、死因がバラバラ。
これは事故なのか殺人なのか。
検事さん2人が自らこの島を訪れ、この謎に迫る、というお話です。
もっと心理描写が欲しいな〜、と思いましたが中編だからある程度仕方がないですね。

実は、微妙に、「ほもー」な感じだなーと思ってしまいました。
多分、普通に読んでそう思う人はそんなにいないと思うので明らかに私の読み方が歪んでる。
タバコに火を点けあうところとか、ラストの一文を読んで、
ちょっとときめいてしまった私は立派にあかん人かもしれません。


石持浅海 『月の扉』(光文社カッパ・ノベルス) →詳細 Amazon.co.jpbk1

那覇空港の国内線が離陸直前に、三人の男女によってハイジャックされた。
彼らの要求は、逮捕・留置されている男を那覇空港に連れて来ること。
その男は、子供たちの自立を助けるキャンプの主催者で、
テロリストでもなければ、宗教団体の教祖でもない。
そして犯人の要求はあくまで「連れてくる」ことであって「釈放」ではない。

そんな異常なハイジャック中の機内のトイレで乗客の遺体が発見される。
遺体の状況から自殺はあり得ない。
しかし、ハイジャック犯によって監視されていたトイレで殺人など行えるはずもない。
究極の閉鎖状況の中、犯人はどうやってその乗客を殺したのか。
そしてハイジャック犯の要求の真意とは。

キャンプ主催者の男と、犯人達の目的が気になってしかたなくて、
一気に最後まで読んでしまいました。タイトルの「月の扉」が全てを握っています。
ちょっと不思議な読後感です。
無理矢理探偵をさせられる乗客の座間味くん(仮)がいい味です。