双子と父子のような生活を始めてしまうという、とんでもない話。 双子の両親がいないのは、それぞれ愛人と手に手を取って逃げてしまったから、 という設定も無茶苦茶だし、とても強引なのに、 ぐいぐいと引き込まれて読まされてしまうこの雰囲気はいったいなんなのか。 双子の会話方法もおかしい。なぜか交互にしゃべるのです。 「例えば、こんな感じに」 「話すんだ」 「決して行数稼ぎをしてるわけでは」 「ないんだよ(多分)」 最初は嫌がっていたのにいつの間にか疑似父親が板に付いてきて、 双子の両親が戻ってくるのを怖れるようになる主人公。 ミステリィのトリックよりも、双子と主人公の心の交流と愛情がメインのお話です。 読むと心があったかくなれる作品です。心のささくれた時に読むと良いです。
人のあしらいも上手いし頭もいいが、身体が滅法弱くてすぐ寝込むのが玉に瑕。 極端に体力のない若だんなは両親から大福に砂糖をまぶしてあるくらい甘やかされて、 5つ年上の兄やである2人の手代にこれ以上ないほど過保護に扱われている。 しかし、実はこの2人の手代の正体は、犬神と白沢という妖(あやかし)。 若だんなの今は亡き祖父に、若だんなの面倒をみるように頼まれたのだ。 そのせいで小さなころから若だんなの周りには沢山の妖たちがいる。 しかも、その妖たちはみんな若だんなのことが大好きなのだ。 そんな若だんなが猟奇的な殺人事件に巻き込まれ、 身を守るために仲間の妖たちと事件の解決に乗り出す。 聞き込みもなにもかも妖がやってくれるので、若だんなはそれを待って聞くだけ。 なぜって、若だんなはすぐに寝込んでしまうくらい体力がないから…。
相変わらず病弱で、人が大声で怒鳴っただけで(しかも自分が怒鳴られた訳ではない) 失神してしまうほど弱々な長崎屋の若旦那と、若旦那が一番大事な手代2人 (実は妖怪)と、その他若旦那の事が大好きな妖たちのお話です。 若旦那の魅力的なところは、病弱で甘やかされている自分が歯がゆくて、 どうにかしよう、一人前になりたいと強く思っているところです。 決して自分をあきらめない強さがあって、そこがとても好きです。 ミステリィというよりも、妖怪たっぷりの人情ものだと思っていただければ、 読んだときに違和感を感じないと思います。 あったかくて、ほろりとして、そして切ない6編の短編集です。
あの伝説の漫画「サルまん(サルでも描けるまんが教室)」の原作者… というか主人公の片割れで共同執筆者の竹熊健太郎氏の、 漫画に関するエッセイというか、講義記録というか、そんな感じの本です。 BK1で連載してた文章だそうです。 因みに表題の原稿料に関する話は最初の方にちらっとあるだけで、 延々と原稿料に関する話があるわけではありません。 そういう意味ではタイトルに偽りありですが、上手いタイトルの付け方だと感心しました。 思わず手にとってしまいそうなタイトルじゃないですか。 書評サイトでタイトル見ただけで、速攻で図書館でオンライン取り寄せしましたよ! (高い住民税払ってるから、借りなきゃ損だし)(たまには買え) 力石の地獄の減量は、漫画家の読み違え(というかボクシング認識の誤り?) から生まれた偶然の産物だったとか、 サルまんは、最初は藤原カムイと一緒にやるつもりだった(見たい!それ見たい!)等、 衝撃的な事実が明らかになるなど、漫画好きにはたまらない一冊です。
乙一のホラーです。 主人公、女子高生の菜深は不慮の事故で左目と記憶を失い、左目の眼球移植手術を受ける。 移植された左目は、元の持ち主の過去を、左目が見た記憶を菜深に見せる。 記憶の戻らない菜深はすがるようにその記憶を記録し続け、 左目の持ち主だった「彼」の住んでいた町へと向かい、左目の記憶の中の人に会いに行く。 彼らに会いたかったから、そして死んだ「彼」は誘拐事件を目撃して殺された事が、 左目の記憶から読みとれたから…。 私はどうも、こういうスプラッタ系の痛そうな話はダメだと言うことがよく分かりました。 いえ、痛そうっていっても、やられてる方は痛くないんですけど!(読めば分かります) もう、最初の主人公が左目を失う話の時点でかなり参りました。 雨の日の傘にビクビクしながら歩いてしまいそうです。 しかし、かなり気色悪い上に、犯人の持っている力(?)が特殊すぎて、 何とも納得のいかない、じめっとした気持ちで読み進めたにもかかわらず、 読後感はわりとさわやかで、悪くないです。なぜだ…これが乙一マジックなのか。 相変わらず後書きが面白いです。
ゲーム好きを生かして書いたファンタジーの第2弾。 相変わらず山田章博さんの表紙イラストが作品世界とマッチしていて素晴らしいです。 シェンとマエストロはこの絵でしかもう、想像出来ません。 長めの中編と、中編がそれぞれ1編ずつ収録されています。 2編とも「テーラ」の人物視点の物語なので、前作とはかなり趣が異なります。 「目撃者」 今までDP(ドリーミング・パーソン、つまり夢の持ち主)の視点で話が描かれていたのが、 今回はシェンの視点で話が進むため、シェンの人物像がより掘り下げられています。 シェンの内面がかなり深く描かれているので、前作よりもヘヴィです。 「テーラ」でのドリームバスター達の地位、彼らの生活や社会システムが垣間見えます。 マエストロから錨(アンカー)を渡されたDPのその後の話がSFマガジンに掲載されてます。 「星の切れっ端」 ドリームバスター志願者の青年の視点で描かれています。 「テーラ」の人物の目を通してのシェンが見られる話だ!と思って読みました。 やっぱり宮部みゆきはミステリ作家。謎が謎を呼ぶ終わり方です。
『テロリストのパラソル』で江戸川乱歩賞と直木賞を同時受賞した藤原伊織の短編集。 決して派手ではありませんが、こういうのをまさに珠玉と呼ぶのだと思わせる作品達です。 ここで描かれた悲しさ、切なさを少しでも分かるようになれた。 それだけで、私は大人になって良かったと心の底から思ったのでした。 表題作の「雪が降る」。 発信されなかったメールの部分が、解説で「ここがいい」と引かれているのを読んで、 思わず膝を叩きました。 会社の昼休みに読んでいて、思わず何度も読み返した部分だったからです。 自分が良いと思った所が、解説でも良いと言われてるとちょっぴり嬉しい。 どれか一編を選べと言われれば、迷わずこれを選びます。 「紅の樹」は思わず号泣。こういう話に、とても弱い。 会社や電車で読んでいなくて良かったと心の底から思いました。ああ思ったさ。
実体を失い、精神体となった異世界の犯罪者が、こちらの人間の夢に入り込み、 その犯罪者を捕まえる賞金稼ぎが夢に現れるといお話。 独自の世界観を創り出す手腕は流石です。 ていうか、本当に宮部みゆきゲーム好きなんですね…。 「ジャック・イン」 週刊アスキーに掲載された、記念すべき第1回のe-NOVELS作品だったような記憶が。 第一回なので、基本は世界観の説明です。親子愛って感じの話です。 この話の主人公はドリームバスター2「目撃者」の登場人物と共に、後に再登場。 「ファースト・コンタクト」 これも立ち読みした記憶があります。 ドリーミング・パーソンは男性。ふとした事で両親と血が繋がってない事を知ってしまい、 その心の動揺を突かれてしまうのですが… やっぱりラストが秀逸なので、読んでもらう以外にないですなあ。 「D・B達の"穴"」 わ、テーラ側のお話、「2」よりも前にあったんですね。書き下ろしだから知らなかった。 「2」の感想に今までテーラ側描かれてないような事を書いてしまいました。 テーラ側の政府は色々と後ろ暗いところを隠しているようで、 その辺りが「3」できっとクローズアップされてくるんだろうなあ。 先が楽しみになるように、終わってます。商売上手いですね。
WEBダ・ヴィンチ上の連載の単行本化だそうですよ。 以前兄が、ダ・ヴィンチのアンケートモニターやってたので、ちょっとWEBダ・ヴィンチを覗いたら、 森先生が連載をしている事に気付き、読んでみることにしたのです。 そしたら、もう、単行本3冊も出てるそうじゃないですか。 これでファンクラブ会員番号148番なんだから聞いて呆れます。 因みに今、会員数8700人を越えてるそうです。148番…あわわわわ。 本の内容については、WEBダ・ヴィンチの連載を読んでいただくのが早いと思います。 読んでみて、受け付けない人はその時点でやめた方が無難です。 ただ50回分は量がありすぎて、読むのに非常に時間がかかりました。 2巻以降は30回分と、ボリュームダウンするようなので助かります。 本書の後書きで、衝撃の事実が発覚するのですが… 私、車道助教授が誰なのか、分かってしまいました…。 考えてみなくても、あのダジャレはあの方しかいないのです。
『女王の百年密室』の続編にあたるのですが、前作を読んだのが○年も前のため、 もうすっかり設定を忘れ果てていたのでした。 でも、全然大丈夫です。ちゃんとこれ一冊でも楽しめるように出来てました。 未来のお話なので、人間そっくりのアンドロイド「ウォーカロン」が出て来たり、 主人公のミチルにもかなり特殊な設定があったりしますが、 そこで描かれている物は決して特殊ではなく、むしろ普遍的なものだと思います。 むしろ、現実とは異なる舞台だからこそ、そのテーマが際だつのでは。 もちろん殺人事件は起きますが、犯人を当てようとトリックを想像するのはやめましょう。 多分、現実的にトリックを想像すればするほど、真相を知ったら腹が立ってしまうと思うので。 あくまで、特殊な設定を持つ、未来の話だということをお忘れなきよう。 迷宮百年〜読了後に、waqwaqが始まったのですが、 リアルに未来を想像すると、どうしても人間同士の直接の交流が断絶している状態になるようです。 小さな集落にまとまったり、完全に個人で孤立した状態で生活していたり。 実際、現実も今までに比べると直接会わずに用が済むように変化していってますね。 人間は群れたがる様でいて、本質的には孤独を愛しているのかもしれません。
「エラリー・クイーンの冒険」と勘違いして読むとえらい目に遭います。私がそうだった。 実は、ミステリ好きを自認しておきながら、クイーン未読なんです…。 それもなんだと思って、図書館で目に付いたクイーンを読んだら、これにあたってしまいました。 この本は、映画やラジオの為に書かれた話を、小説にしたものらしいです。 なので、本来この本は、「エラリー・クイーンの冒険」を読んでから読むべき…。 内容はともかく、訳がひどいというか…ひどい。 ひょっとしたら元の文章がすごいのかもしれないけど、あまりにもひどすぎる。 こんなにひどいの読んだの、ハリー・ポッターの四巻以来です! 「わざわざ分かり難いように、読みにくいように訳してないか?」と邪推したくなりました。 いつか、改訳が出るといいなあと思いました。(原文で読む根性はない)
某手塚治虫先生の漫画を彷彿とさせるサブタイトルですね。 今回はWEBダ・ヴィンチの連載30回分が収録されてます。 私にとってはこのくらいがちょうど良いです。1年分だとボリュームがありすぎです。 ほら、図書館の返却期限とか、ありますからね…(ごにょごにょ…)。 あ、でもでも。新シリーズの『Φは壊れたね』はちゃんと買いましたよ!自慢にはなりませんが。 内容は相変わらず、前作までと一緒…。 単行本おまけは、座談会メンバによる、夏休みの自由課題。 三者三様、まったくテーマがかぶらない所が非常に面白かったです。 レポートって、テーマを選ぶことが一番難しくて、最も評価される部分だと思うんですが、 みなさん良くこんなテーマ考えつくなあと感心しました。
相変わらずのまま第3弾。基本姿勢はまったく変わりません。ひたすら、淡々と。 ちなみに第4弾は「鳳凰編」です。 今回のおまけは、名古屋デジカメギャラリィ。 取り立てて面白いところはなかったのですが、ナナちゃんがどんな感じなのか 気になっている方は見て損はないと思います。 今(2004年10月25日現在)、ナナちゃんはドラゴンズのユニフォームを着ているとの 情報を得ているのですが、果たして本当でしょうか?
空で 生きているわけではない。 空の底に沈んでいる。 ここで生きているんだ。 『スカイ・クロラ』の続編。ナ・バ・テアってなんの事だろうと思っていたら「Non But Air」の事でした。 相変わらず表紙が大変美しい。 前作読了から間が空いたため、キレイに内容が忘却の彼方で、 主人公が女性だということさえスッパーンと忘れていました。すごいぞ私。ボケ来てるのと違うか。 戦闘機パイロットの主人公の生活が淡々と描かれます。 ただひたすら透明に、淡々と。 森博嗣初心者にはお勧め出来ませんが、飛行シーンの浮遊感は良いですよ。
民俗学は完全に専門外ですが、大学院で講義にもぐったりしてたので、まあ良し。 宮田登先生は2000年にお亡くなりになってます。 当時M1だった私はかなりショックを受けました。 是非一度お会いしてみたかった先生だったので…。 この本は、過去に雑誌等に載せた論文を加筆修正して集めたものです。 編集途中で宮田先生が亡くなられたので、残りは出版社が編集したと、 小松和彦先生の解説にあります。 江戸時代の妖怪からトイレの花子さん、果てはリングまで、 過去と現在の都市空間における怪異の伝承についての論文集です。 子供の頃には、まさかトイレの花子さんが研究対象になるとは思ってもいませんでした。 考えてみれば、江戸時代以前にも便所の妖怪は存在したわけですから、 トイレの花子さんは、その妖怪の系譜なのかもしれませんね。 妖怪や都市伝説が好きな人にはお勧めです。 |