チェーン・ジョイント



 こんなものを購入しました。これはKMCの「ミッシングリンク」という名称のチェーンジョイントです。なかなか便利なツールですが、これを導入するにあたり、この2週間ほどドタバタを演じてしまいました。ちょっと長いですが、その顛末記です。

 KMCはシマノのチェーンを製造している台湾メーカーとして有名ですが、ワイパーマンやSRAMと同様、チェーンカッターを使わず、手でチェーンを切ったり、つないだりできる製品を、最近自社ブランドで販売しています。ミッシングリンクは本来、そのチェーン用のスモールパーツです。

 当初、そのチェーンを購入しようと思っていました。簡単に着脱できるのでメンテナンスが楽だからです。私は改造好きのメンテ嫌いという、どうしようもない自転車乗りです。随分メンテを怠けていたので、特にロードレーサーはチャリチャリ音がひどくなっていました。さすがに「こりゃ、いかんなあ」と思い、簡単に着脱できるチェーンにしようと考えたわけです。

 「チェーンぐらい、チェーンカッターで切って洗えば済む話だろう」と言われそうですが、その通り。メンテの事でも改造の方向で考えてしまうのが、私の悪い癖です(苦笑)。でも、その方が楽しいじゃないですか♪ それに、手で簡単にチェーンを外し、洗浄用のケミカルを入れたブリキ缶に放り込み、ガシャガシャやって、後はウエスでふき取って・・・これは楽です。これなら面倒くさがらずに、定期的にチェーンを洗浄できそうです。
 
 ところで、この手のチェーンではワイパーマンがメジャーですが、KMCの製品にしようと思ったのは、シマノと同じチェーン(たぶん)なら、クランクセットやスプロケなどに負担を掛けないだろうと判断したからです。ところがです。なのださんのブログでKMCのチェーンを話題にされていたとき、coo-yamさんという方がシマノのチェーンにこのミッシングリンクを付けたらどうか、とコメントを入れられていました。

 それを読んで「そうか!」と思いました。調べてみると、確かにシマノのチェーンに使えるとあります。今使っているデュラのチェーンは、着脱の手間以外は不満がありませんから、これにミッシングリンクを取り付ければ安上がりです。

 その後、仕事の途中で、都内の自転車ショップをひやかしていると、このミッシングリンクが売っているのを見つけました。ただ、そのとき売っていたのは、シマノのチェーンにも使えるタイプではなく、KMCの最高級チェーン「X9SLシリーズ」専用のものでした。




 でも、専用ってなんでしょう。形状が変わることは考えられませんから、多分使えるだろうと、いつものようにアバウトに考え、購入してみることにしました。で、ロードレーサーに付けてみました。やはり簡単に装着でき、心配した変速性能の劣化も気になるほどではなく、問題ありません。

 ところが、試しに外そうとしてみたら、外れません! 何度チャレンジしても、外れません。「えぇ〜、X9SLシリーズ専用だと、やはりマズイのか」と呆然としてしまいました。これでは、デュラのチェーンの変速性能と強度を劣化させただけです。

 ここで、懲りないのが私です。じゃあ、シマノのチェーンにも使えるタイプの買おうと、数日後、同じショップを訪ねたら、ありました。入荷していたのです。パッケージにシマノとSRAMのチェーンにも使えることが明記してあり、これなら大丈夫そうです。

 ところが、レジにそれを持っていくと、店員さんが「シマノのチェーンに使えませんよ」と言うではないですか。聞くと、シマノのチェーンに比べて、ミッシングリンクのピンの幅が微妙に短いために、使用しているうちにピンが歪んで、トラブルになる恐れがあるとのこと。

 「えぇ〜!」と思いましたが、迷わず購入しました(笑) だって、そんな理屈は成り立たないじゃないですか。それに、万が一そうであっても、ミッシングリンクが破断するだけです。それこそチェーンカッターとアンプルピンで応急処置はできますから、まあ大丈夫でしょう。

 でも、さすがに気になったので、ノギスで測ってみました。予想通り、デュラのチェーンとピンの幅は変わりません。想像するに、その店員さんが言うようなトラブルは、使い古して伸びたチェーンに、このミッシングリングを付けたケースで発生したのでしょう。それなら、そこだけが幅が狭いわけですから、負荷がかかってトラブっても不思議ではありません。



 さて、新たに購入した“シマノ互換”のミッシングリンクですが、今度は折り畳み自転車のPacific-18に取り付けました。Pacific-18の方はチェーンが脱落しやすいため、より不安定にするかもしれないミッシングリンクを付けるつもりはなかったのですが、ロードレーサーのチェーンに2つも付けるのはバカですから、こちらに付けることにしました。

 で、付けてみました。さて、試しに外そうとすると、外れません! ガーン!です。しかし、何かおかしい。ロードレーサーに付けたX9SLシリーズ専用のものはともかく、こちらが外れないわけがない。外し方が間違っているに違いない。

 というわけで、冷静に考えてみると、両手で外そうとするからチェーンの方向がずれ、うまく外れない、ということが分かりました。で、片手の親指と人差し指でミッシングリンクを持ち、左右にずらすと簡単に外すことができました。

 「なーんだ。あせるじゃないか」です。でも、そうするとロードレーサーに付けたミッシングリンクも、この方法で外せるんじゃないか。やってみると、こちらも簡単に外れました。バカみたいです。

 ところで、世間には同じように外せなくて大騒ぎしている人が大勢いらっしゃるらしく、サイクルベースあさひのサイトでも外し方の解説が動画でアップされています。しかし、あさひの動画では、両手を使っています。これでは、コツがいるので、なかなか外せないと思います。

 もう一つ、余計なことですが、店員さんの忠告といい、雑誌の「ミッシングリンク」の紹介記事の書き方といい、そして、あさひの“警告文”も含め、何か妙な感じです。単なる邪推ですが、これを使わせたくないシマノとKMCの間で、微妙なあつれきがあるのかもしれませんね。まあ、とにかく自己責任で注意深く使うことにしましょう。

 ところで、このミッシングリンクでチェーンの着脱が容易になったことで、思わぬ効用がありました。SKYSHOCKをPacific-18に取り付けましたが、そのときチェーンがじゃまだったので、チェーンを取り外して作業しました。いやぁ、作業がはかどったこと! チェーンを外しておけば、フレームの掃除も楽なので、これはいいなと思いました。




 ロードレーサーと折り畳み自転車のPacific-18で、KMCのチェーンジョイント「ミッシングリンク」をシマノのチェーンに装着して4カ月以上経ちました。某有名自転車ショップの店員さんに「シマノのチェーンに使えませんよ」と脅かされたのですが、今も全く問題ありません。あれはいったい何だったのでしょうね。

 ところで、最近コメントをいただいた通りすがりさんから、Pacific-18に付けているチェーンジョイントの向きが逆ではないかというご指摘をいただきました。当初は下の写真のように取り付けていたのですが、確かにチェーンジョイントが上に来たときに、KMCの文字が逆さまになっています。取り付け方向が違うと、形状も前後逆になりますので変速性能などにも影響が出そうです。

 で、取り付け方向を変更しました。それで、変速性能や歯飛び防止にどれだけの意味があるかは、正直言ってよく分かりません。ただ、正しい方向に付けておいてた方が安心感はありますね。それはともかく、チェーンを簡単に外せるというのは、想像以上に便利です。シマノのチェーンとの組み合わせはコストパフォーマンスが高いですから、極めて満足度の高いスモールパーツとなりました。




 これ、何気に便利です。新品のチェーンや切ったチェーンをつなぐ際に、チェーンの両端近くを引っ掛けて、つなぐ作業を簡単にするための工具で、ミノウラの製品です。チェーンがヌルッと動いたりせず、ピタリと固定できるため、アンプルピンを使うときはもちろん、チェーンジョイントを使う場合でも重宝します。

 この製品は「CCH(Chain Connecting Hook)-1」という立派な名前が付いています。しかし考えてみれば、この工具は簡単に自作できますね。それを定価500円で販売するとは、ミノウラもいい根性をしています(笑) まあアイデアとしては秀逸で、バネの具合も絶妙なので、良しとしましょう。もっとも定価では買う気になれませんが。



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