6L6GC-12AU7-FET+SRPP+Cascode差動直結PP

-全体の構成と設計-

使用する部品の構成

【電源トランス】
 ノグチPMC-170M(9, 700円)
 Primary 100V , Secondary 350V-320V-290V-0-70V-290V-320V-350V

 Dc170mA / 6.3V-2.5V 3A / 6.3V-2.5V 3A / 6.3V-5V 3A / 5V 3A

【出力トランス】

ソフトンRX-30-8-プッシュプル用8KΩ/30W(9, 800円)
直流抵抗:1次P-P間: 128Ω
1次許容DC電流 210mA(2本分) アンバラ:5mA
1次インピーダンス 8KΩ、UL端子(50%)有り
2次インピーダンス 6Ω

【チョークトランス】

<左右独立電源の場合-2個必要>
ノグチ-PMC-115H(945円)
インダクタンス1H/最大電流150mA/DCR 27Ω


【全体の構成を考える】

 6L6GC、全段差動プッシュプルで直結回路とします。
 直結回路とするため、回路は、2段構成にします。このため初段をFETによるCascode+SRPP差動回路とし、初段の利得を稼ぐことにします。初段は、jFET2SK246と複合3極管12AU7で構成します。

 Cascode+SRPPの構成とすることで、利得が高くなるため、増幅度μの値が低く、内部抵抗rpの低い複合3極管が使えるので、選択肢が多くなります。初段の複合3極管は、10本位から特性の揃ったものを4本選ぶ必要があるので、実売価格が比較的安い12AU7を選択しました。

 初段管の12AU7の動作点のIpが、2mAから5mAとなるので、それに対応するFETを調べると、2SK246でいけそうです。(「マルツパーツ館」のHPで無料の会員登録を行い、FET-DataSheetをダウンロードできます)。FETは、50本購入して、特性の揃ったものを4本選びます。

 6L6GCは、特性の揃ったもの4本を購入する予定。

【初段の検討】

 初段の検討は、FETとSRPP下球の特性図を並べて、次のように検討を行います。(検討を2-3回繰り返せば、動作点が決まります)

 2SK246の動作点を、特性図から大体、VDS=12V、VGS=-0.65V、ID=2.5mAとします。

 12AU7の動作点は、FETの動作点から、IP=2.5mA、出力段のカソード電圧から考えて、VP=125Vとします。ロードラインは、250VからRL=50k位の線です。

 250VからRL=50kのロードラインを2SK246の特性図に当てはめてみると、12AU7下球の250Vの点から、2SK246の動作電圧12Vを引いた238Vの点からRL=50kのロードラインを引きます。4.76mAがカットオフのラインになりますので、このラインまでが動作範囲になります。動作点は、VGS=-0.65V、ID=2.5mAなので大丈夫です。動作電圧は、少し増えて、大体15Vあたりになると予想されます。

 初段FETは差動回路になるので、入力電圧1Vとすると、ひとつのFETあたりでは、0.5Vになります。VGS=-0.65Vの点から、0.25Vずつ振ってみると、それぞれVGS=-0.4V、ID=3.2mA、VGS=-0.9V、ID=1.8mAとなります。12AU7のロードラインのピンクの線は、2SK246の動作電圧15Vを差し引いたもので、この線を超えては動作しません。

 カスコード回路は、電流増幅となるということなので、これを12AU7のロードラインに当てはめると、125V、2.5mAの動作点を中心に、90V、3.2mAと162V、1.8mAの点に振れます。162V-90Vの間で動作しますので、約72倍(72Vp-p)の利得が予想できます。また、6L6GCの動作点のバイアス値は、-26Vなので、72Vp-pあれば十分にドライブできます。

初段FET-2SK246の特性図

初段管12AU7のロードライン

【初段回路の検討】

 上の考え方にしたがって、初段回路を考えてみます。

 12AU7は、μ=17 Rp=7.7です。(「電圧増幅双3極管比較表」のHPから)
RL=50kΩとすると「私のアンプ設計マニュアル」のHPによれば、上側の球の負荷抵抗値は、

負荷抵抗値(RL) = 上側球のrp + ( 上側球のRk × 上側球のμ ) + 上側球のRk
ということなので、

上側球Rkは、

Rk = (RL − rp) ÷(μ+1)
となるので、

Rk=(50−7.7)÷(17+1)

Rk=2.35kΩ

*HP「情熱の真空管」の「私のデータ・ライブラリ」に 「rp=7.7は、少し過大で、実際には、rp=10くらいだろう」という趣旨の評価があるので、Rk=2.2kΩとする。

初段 FET-Cascode+SRPP回路

【出力段の検討】

出力管6L6GCプッシュプル、出力トランス8k(ソフトンRX-30-8-プッシュプル用8KΩ/30W)を予定。
次のとおり、4kのロードラインを引いてみます。出力段のIpは38mAを想定しているので、バイアス0Vのラインが76mAと交差するように、ロードラインを引きます。290V、−26Vあたりが動作点です。(赤いラインが大体の最大定格30Wの線なので、まだゆとりがあります)。

出力段6L6GCロードライン

【総合利得の予想】

 1) 理想最大出力は、
    0.038A×0.038A×8000Ω×0.9÷2=5.2W

 2) 8Ω負荷における4.2W時の出力電圧
    √(5.2W×8Ω)=6.45V  <最大出力時の出力電圧>

 3) 6L6GCの入力感度は、
    26V÷1.414=18.4V(r.m.s.)

無帰還総合利得=最大出力時の出力電圧/最大出力時の初段入力
なので、

最大出力時の初段入力(入力感度÷初段利得)を求めます。
入力感度は、上の3)から、18.4V(r.m.s.)

初段利得は、約72倍です。

したがって、最大出力時の初段入力(入力感度÷初段利得)は、
上記3)から、


(入力感度)18.4V÷(初段利得)72=(最大出力時の初段入力)0.26
になります。

無帰還総合利得

上記2)から、
(最大出力時の出力電圧)6.45V÷(最大出力時の初段入力)0.26=24.8倍
になる予想です。

【負帰還】

 このアンプは、総合利得がおよそ24.8倍あると予想できるので、
 24.8倍=27.9dB〔20log(10)24.8をエクセルで計算〕
 「パワーアンプの増幅度は、10倍位が適当」ということなで、
 10倍=20dB〔20log(10)10をエクセルで計算〕
 27.9dB−20dB=7.9dB
 の余裕があります。製作後、実機での調整になります。

【電源部】
電源は、ダイオードを使い整流します。
ノグチ-PMC-170Mは、ブリッジ整流後で、350V×1.3=455Vが供給可能です。
 6L6GC、1本あたりのプレート電流を38mAとすると、4本の合計で152mA。このトランスは、Dc170mAあるので何とか大丈夫です。
 出力段のプレートに供給する電圧は、チョークトランスのノグチ-PMC-115Hは、直流抵抗が27Ωなので、電圧降下が、27Ω×76mA=2V。
出力トランスの直流抵抗が、1次P-P間で128Ωと推定されるので、電圧降下は64Ω×38mA=2.4V。
 電圧降下は、合計で2V+2.4V=4.4Vになりますので、455V−4.4V=450Vとなります。

【回路図】

戻る