Kさんの俳句のページへようこそ

2020〜2021年


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2021年
(令和3年)




12月の句





コーヒー碗ぬくめるまどか冬の朝



子の数の縄跳びの縄納屋の壁



侘助に鋏の音の二回ほど



亡母(はは)の声冬青草を愛づる声



友送る慣れぬ讃美歌冬の虹



喪籠りに暫しの活気晦日蕎麦






 
 


11月の句





筆談の友の指先秋澄みぬ



山紅葉肩まで埋まるプチホテル



木の実降る蓼科小津の散歩道



環八を越える意気地や痩せ狸



一度だけ会ってそれきり初時雨



微笑みは布施と説きをり返り花
    
(寂聴さんが逝ってしまいました)








10月の句




ひと月が老父(ちち)には長く烏瓜



蓮の実の弾けて自粛解除かな



運動会いやに頼もし六年生



原っぱは草紅葉して陶器市



忘れてもよいこと多し温め酒







9月の句




産院の小さき鼓動よ星月夜



灯火親し遠近両用鼻メガネ



きりぎりす其処は僕らの秘密基地



甘薯食むのべつ失恋する友と



秋扇閉ぢ大叔母の聞き上手








8月の句




手花火と待つ東京のいとこ達



悶着を鎮める梨の甘さかな



寝ころべば染むシンフォニー大銀河



洗礼を受ける友あり涼新た










7月の句




モンブランにインク入れてみる父の日



留守番を向日葵たちに頼みけり



夜濯ぎの上履き靴の大中小



人間はしょうもないと言ひつ焼酎









6月の句




口遊み行く新緑は聞き上手



高齢者てふ一括り心太



文机にさくらんぼ置く仲直り



父の日やホームの父の爪を切る



虹よ待って見せたい人がいるのです




 


5月の句




長閑とて機嫌直せぬ一日あり



雹叩く電話ボックス撤去跡



朽ちかけし土蔵に屋号麦の秋



離陸せよ屋上庭園目高たち



夏燕家族に町の写真館





 
 


4月の句




薔薇のロイヤルサンセット、
我が家ではもう古株になりましたが
今年も艶やかに咲き始めました。
これから順番に色んな薔薇が咲いて
いくので、本当に慰められます。





廓噺聴いてそぞろや花の夜



花吹雪坐禅先着十名さま



胸のうち隠しおほせり花衣



年若の長閑と言ふを聞く長閑



うつ伏せば美ら海ヤドカリの目線




 


3月の句




瓢箪池鯉の引っ越しあたたかし



囀りのペンキ塗りたてベンチかな



糸箱の絹の艶めき春の宵



透き通る骨の手に置く紙風船



万歩計今日もゼロから花菜風








2月の句




シクラメン今日が始まる東窓



公園に余寒の吐息移動カフェ



包み解く鶯餅に経木の香



亡き父も数に入れ買う桜餅






 

1月の句



拭き上げし漆器初日を集め居り



牛車の輪ぎぎぎと回る年賀状



成人式明けて華麗なる脱け殻



きりきりと弓引く頬や寒稽古



膝掛に諭されている意地っ張り



前奏の確たるリズム冬木立




2020年
(令和2年)

 

12月の句



寒昴ヒマラヤ杉は夜を束ね



小春日や岬離るるちぎれ雲



生牡蠣をためつすがめつ先ず軍手



エコバッグ葱の長さを持て余し



初雪や転宅果たす気象庁



ハグしたき人の数多や大晦日

 






11月の句


秋の蝶一筆書きのさようなら



種採りやコロナの年と書きて封



重ね置くアガサクリスティ冬用意



肩車まずオリオンを教えよう



水音に人在る気配冬の宿

 





 

10月の句



すれ違ふ人も秋風纏ひをり



旧姓を呼ぶ声がする秋祭



渡り鳥待つ人もまた代替り



朝露のサドル拭く今日も平熱



賄ひのどんと山盛り衣被







  

9月の句



子規の忌や英訳俳句載ってをり



台風の渦の内外LINE飛ぶ



幾分の野趣身につけて秋茄子






 

8月の句



残り香は亡母の香水小抽斗



前を行く甚平の父子相似形



小路へと花火帰りの下駄の音



コロナ禍の不要不急やかき氷

 

泣き言も言はで残暑の室外機







 

7月の句



日傘閉じて降りしきる樹々のざわめき



ぺティキュアは赤Uターンする蜥蜴





 

5月の句



聖五月友見送りぬハグもせで 

(コロナ禍のせいでハグはもとより
手を握ることすら叶いませんでした)




梅雨間近空に穴あり青のあり





 

4月の句



たんぽぽや静まり返る小学校

<子ども達が一日も早く学びの場所に戻れますように・・。>


蜆汁今宵はスーパームーンなる

<美味しい物をありがたく頂き、美しい月を愛でて、、
今を大切にしなくては。>





 

3月の句




保健室牛乳ビンの桃の花


陽炎の中にゆらゆら杖の父





 

2月の句




解き終へし亡母の着物や冬夕焼け


笹鳴きや庭師の鋏止まりたる


内外の境無き世の鬼やらひ


南口一足先に春めきぬ


白梅や母校にありし作法室


庭の梅が五分咲きです。
二階から撮ってみました       下から撮ると  

夫の祖父が接ぎ木したのだそうですが、
毎年綺麗に咲いてくれます。
古木のせいか実付きはいまいちです。




 

1月の句




皺深きガードマンにも日脚伸ぶ


風呂吹や四方山話ひとめぐり


叱られて籠城の体屏風かな