そんなある日のこと。
この村にみすぼらしい身なりの、じいさんとばあさんが、一匹の
犬を連れてやって来た。
じいさんの荷車には壺や甕(かめ)など、村人があまり見た事もない、
珍しい器が山ほど積まれていた。
しかし、どことも知れぬよそ者に、多くの村人は猜疑心(さいぎしん)で
寄り付こうとはしなかった。
ある日、じいさんは、荷物の壺から今にも枯れそうな苗木を
大切そうに取り出すと、村人があまり耕作に向かない小高い荒地に
植えたとさ。
村の者は「どうせ水がない。いずれ木は枯れてしまうだろう」と、
ひそひそ話をしていたが、そんな話をよそにじいさんは、枯れそうな苗木の
周りに幾つもの甕を用意した。
やがて降る天からの恵みの雨や、近くの小川からせっせ、せっせと
水を運び、甕に水をたくわえ水を絶やすことはなかつた。
来る日も来る日も、苗木に水をやり、
「早く元気になってくれ、この世で花を咲かせて見せてくれ」と陰口や
噂をよそに、朝夕水をあげて世話をした。
金儲けにもならない事に精を出すじいさんに、村人は変人扱いをしたと。
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