あれから幾年がたったであろう。
     じいさんの夢うつつの世の中は、まだまだ見えて来ないぞや。
     明日のめしはどうするか。いつもばあさん心配している。
    しかし、じいさんは無頓着。 この国に地獄の釜の蓋が開かぬうちに、
     「早く花が咲いてくれ!! 間に合わないぞ!!」それまでは「己の事にかまう
    暇などないわい」と、甕の溜め水覗いては、枯れ木に水をあげている。
        「早く元気になってくれ、この国に心の花が咲くときは、
       壺に一枝飾ろうぞ!!」と相変わらず、枯れ木とにらめっこ。

                 愛犬ポチの物語

    そんな二人の様子をポチは良く知っていた。
      毎日、ばあさんが食物を減らして、与えてくれる慈しみの心に、ポチも、
     いたたまれなかったのであろう。
    ある日、ポチは神様から禁じられている、人間社会の欲の争いごとの種である、
     大判小判の入った壺が埋められている場所を探してしまった。 
     
                 「ここ掘れワンワン」

     あまりポチが裏の畑で吠えるので、じいさん何かと鍬(くわ)で畑を
    掘り起こすと、土に埋もれた壺の中から大判小判がざくざくと出て来る・・。
     じいさんはたまげた。しかし、じいさんは壺のの中から、小判二枚だけを
    取り出すと残りの大判小判をまた穴に埋めてしまった。

     そんな様子を覗いていた近所の欲張りじいさん、大判小判に目がくらんだ。
      あの裏の畑はおらがのもの、残りの金はおらがのもの、小判2枚は
     見つけた駄賃にくれてやる。そのかわりポチを貸せと言い寄った。
      仕方なしにじいさんは、ポチを貸す約束をした。
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