平成8年古陶磁コレクション「了庵」は、小布施町にオープン致しました。
    今日、おかげ様で多くの皆様に支えられて、オープン後20年目なりました。
    今なお【壺物語」に夢をかける、貧しき老人の戯言としてお読みくだされ。



               



         孤独なさかじいさん壺物(現代版)


     昔々ある日のこと、
      外様のお殿様がお供を従えて都から国表へ帰る途中、小さな古びた
       山里に通りかかった。
      小高い山路には、お殿様が今まで見た事もない見事なサクラの老樹が、
    美しい花を満開に咲き乱れていた。
      誰が植えたか知るよしもないが、その見事なサクラに、行きかう旅人たちは
    心を癒された。

    この世は人の心がみだれ、お殿様も「さて何か打つ手はないものか?」と
    途方にくれていた時である。
     あまりの美しいサクラの姿に心を奪われて、この老樹の下で「一服しよう!」と
       供の者にカゴを止めさせた。

      誰がいつ頃、この見事なサクラを植えたのか?
        供の者に「知っている者には褒美をとらせるぞ」と村中を聞いて回らせたが、
      誰もが口を固くとざして話したがらなかった。

     そんな折、ひとりの老婆が通りかかった。 
    お殿様は直接この老婆にサクラの木の由来を尋ねると、老婆は重い口を開いて
    ポツリポツリと語りだした。

    その世は、豊作で物が満ち溢れていた。お金さえあればなんでも買えた。
     そして村長(むらおさ)までもが、今の世は極楽極楽と祭りにかまけて、
    政(まつりごと)を忘れていた。


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