最終更新H17.4.2
無償配管契約を巡る民事訴訟判例

 以下は、家の売主の業者さんにもらった、私と同様のケースにおける民事訴訟資料の内容です。


 あるLPガスの販売店と消費者との典型的な無償配管を巡る民事訴訟について、平成11年1月に東京地裁が判決を出しました。概要は以下の通りです。

事実関係
ガス販売店は、家屋の建設段階で配管などのガス設備工事を自ら費用を掛けて行った
後日その家屋を買った消費者にガスを供給する際、その消費者とガス販売店は、ガス設備について、次のような内容の契約を取り交わしていた。
  (1)販売店は、配管、マイコンメーター、ガス容器などのガス設備を消費者宅に設置して、消費者に無償貸与する。
  (2)消費者は、販売店から継続的にLPガスの供給をその受けるものとし、販売店を変更する場合には違約金として、
     設備の金額に相当する費用を支払う。

ところが、その消費者が販売店を変更した後も、費用を支払わずにガス配管を利用していたため、費用の支払いを巡って訴訟となったもの。
判決
 裁判所は、ガス配管は消費者のものであり、また本件契約は錯誤により無効であるとし、ガス配管の費用などを支払えという販売店側の請求を棄却しました。
 裁判所の判断のうち、関連するポイントは次の通りです。
本件ガス配管は消費者のものである。
   (1)建物の売買契約時点で、当該建物にはガス販売店により既に本件のガス配管が設置され建物の
      
構成部分となっていた
   (2)消費者は、建物の売主や仲介業者から、本件
ガス配管は売買の対象から除かれているとか、
      
それはガス販売店のものであるなどの説明を受けていない

   (3)従って、ガス販売店が当該建物に設置したガス配管は、当該建物と一体のものとして売却され、
      消費者はその所有権を取得したこと、ガス配管を含めて建物の所有権を取得した旨認識したことは
      明らかである。
   (4)仮に、販売店が建物売主との間で所有権を留保していたとしても、その旨の公示が無い以上、消費者に
      その所有権を抗弁することはできない。
本件契約では消費者に錯誤が有った
   (1)本件の
ガス配管を自己の所有として認識していた消費者が、それを販売店から借り受ける旨の契約書に
      その内容を認識しつつ署名することは考えられない
から、消費者の意思表示には錯誤があったと認められ、
      錯誤が無ければ、消費者のみならず一般人においても、本件契約書に署名することは無かったというべき
      である。
   (2)なお、消費者に、錯誤に陥るにつき重大な過失があったとはいえない。
本件は、不当利得には当たらない
   消費者は、ガス配管を含んだ建物を売買により取得したものであり、販売店の設置したガス配管に関し、
   消費者に法律上の原因のない利得は発生しない。

以上、
財団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センター 平成11年3月発行 「家庭用LPガスの取引に関するアドバイス」より