NTT60歳雇用継続訴訟について
2008年4月21日 PM2時(記者会見)

 
NTT東日本を被告として、今年3月に「定年退職」となった従業員が、60歳定年制をとる就業規則は、高年齢者雇用安定法に違反し無効であるとして、地位確認と賃金などの支払を求めて、4月21日に東京地裁に提訴しました。

【 事件名 】 
地位確認等請求訴訟
【 請求の趣旨 】
  1 現在もNTT東日本の社員であることの確認
  2 2008年4月以降も毎月の賃金(10名合計約520万円)の支払い
  3 損害賠償請求(弁護士費用)1人70万円の請求 
【 原告ら 】
 黒岩春吉(60歳)ほか9名(いずれも60歳)
 NTT東日本をその意に反して今年3月に定年であるとして退職させられた者
【 請求の根拠 】
 高齢者雇用安定法は60歳定年制の廃止を求め、@65歳定年制、A希望者が65歳まで勤務できる雇用継続制度の創設、B定年制の廃止、のいずれかを義務づけた。
 しかし、NTT東日本は60歳定年制を維持し、かつ、Aの雇用継続制度の創設もしない
 すなわち、就業規則上、NTT東日本の社員は60歳以上雇用継続できる制度がないのであるから違法無効であり、原告らは現在もNTT東日本の社員である。

【 紛争の背景 】
1 50歳定年制の強行と原告らの対応
 NTTは、01年4月16日、「NTTグループ3ヵ年経営計画について」を発表し、東西地域会社(NTT東日本、NTT西日本)の業務を企画や法人営業等に特化し、注文受付、設備保守・運営、故障修理等の業務について、各地域会社が100%出資する子会社にアウトソーシング(外注)し、人的コストの低減などを図るリストラ計画を発表しました。
 この「新3ヵ年計画」に基づき、NTT東日本は、アウトソーシングの対象業務に従事していた51歳以上の従業員について、いったんNTT東日本を退職し、現賃金水準を15〜30%下回る条件で、子会社に再雇用するという方針を打ち出しました。NTT東日本は、01年12月から、従業員に対し、この「退職・再雇用」への「同意」を迫りました。50歳定年制の強行です。
 その際、「退職・再雇用」に同意しない場合は、「60歳満了型」として、「勤務地を問わず、成果・業績主義賃金が徹底される勤務形態」となるとして脅し、「同意」を強要しました。原告らは、通信労組に所属し、あるいはNTT労組の「方針」に反して、「退職・再雇用」の「同意」をしなかったことから、「60歳満了型」を選択したものと一方的にみなされました。
2 高齢者雇用安定法の施行
 06年4月1日から施行された高年齢者雇用安定法は、事業主に65歳までの雇用確保措置を義務づけています(現在は64歳までの雇用確保が義務で、それを超えて65歳までは努力義務として定められています。)。事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するため、@定年の引き上げ、A継続雇用制度の導入、B定年制の廃止の3つのいずれかの措置を講ずることが義務づけられています(同法9条1項)。
 NTT東日本は、上記リストラに際し、定年退職した従業員を自社に再雇用する「キャリアスタッフ制度」を廃止する一方、「60歳満了型」従業員については、自社では雇用を継続することにしておりません。
3 原告らの不利益
原告らは、今年3月までに60歳をむかえたため、同日をもって会社から「定年退職」することを強制され、雇用継続の願いは会社により無残にも退けられました。原告らの、これからも引き続き会社に貢献していきたいという思いは、ついに聞き入れられることはありませんでした。
しかし、NTT東日本は「60歳定年」に未だ固執し、A雇用継続制度を設けていないのであるから、同社は雇用確保措置義務を果たしていないことは明らかであり、同社は「高年齢者等の職業安定その他福祉の増進」という高年齢者雇用安定法の目的を踏みにじっているのです。
 原告らは、このような「60歳定年」のみでA雇用継続制度等の雇用確保措置を設けていないNTT東日本の就業規則は高年齢者雇用安定法9条1項に違反し、労働基準法92条1項によって無効であり、その結果、期間の定めのない雇用となることから、従業員としての地位の確認と、今年4月以降の賃金の支払などを求めて、本件提訴に及んだ次第です。原告らの雇用と生活を守る裁判について、ひろく国民に知らせていただきたく、報道各社に報道をお願いするものです。

【同種の訴訟】
 2007年6月にNTT西日本を「定年退職」させられた11名が大阪地裁に提起しているのに引き続く提訴である。
以 上