小堀の渡し 〜東葛の中の茨城を結ぶ渡し舟〜



 小堀の渡しというのは、利根川南岸の東葛地域(我孫子市)に取り残された茨城県取手市の小堀地区と北岸の取手市本体を結ぶ渡し舟のことです。明治44年から大正9年にかけての利根川改修工事の際、南へ蛇行していた利根川を一直線に変えました。その結果、本来、利根川の北岸にあった小堀地区は古利根沼と共に、利根川の南岸に残り、我孫子市の中に孤立してしまいました。そこで、小堀住民のために運行を開始したのが小堀の渡しです。




 小堀の渡しは、小堀地区と北岸の2カ所(サッカー場前船着場、ふれあい桟橋)を1時間に1便の割合で運行しています。渡し舟の言っても立派な船で、船首に客室、船尾に操舵室があり、真ん中のスペースには自転車を置くことができます。小堀地区の人は無料で、それ以外の人でも片道100円。さすが行政が運行させているだけあって、とてもリーズナブルな料金設定です。

 ところで乗船すると、とても100円とは思えない立派な領収書がもらえます。しかも、レトロ感あふれたデザインで、よいお土産になりますね。




 で、乗ってみました。これ、楽しいです!私はこの日(2006年6月25日)、利根川北岸のJR常磐線の鉄橋のすぐそばの「ふれあい桟橋」から乗りました。自転車は船の真ん中に乗せます。一応、スタンド付の自転車でなければいけないことになっていますが、混んでなければスタンドなしの自転車でも乗せてもらえそうです。この日は、スタンドの付いた折り畳み自転車のPacific- 18を使いましたので、ノープロブレムでした。

 さて、ふれあい桟橋から小堀までは、所要時間で15分程度です。客室は換気が悪く今の季節は暑いですが、天窓が開いており、そこから顔をのぞかせると、涼しくて気分がいいです。しかも運行中、カワウがすぐ傍にやって来ては、川に潜り魚を採る姿が2度ほど見れました。利根川の両岸は、基本的に緑しか見えませんので、ちょっとしたクルージングの風情ですね。

 乗り合わせた乗客は他に2組。60歳前後のオバチャンと幼児を連れた若いお母さんです。私は、そんな乗客の方がいらっしゃるのを忘れ、はしゃぎながら写真を撮りまくっていました。ところが、オバチャンも「こりゃ楽しいわ」と、同じようにはしゃいでいるではありませんか。見知らぬ他人同士とはいえ、2人も陽気なヤツがいれば、子連れのお母さんも含め、あっと言う間に打ち解けてしまいます。

 地元の人である、そのお母さんから小堀の渡しの歴史を聞いたり、わざわざ小堀の渡しに乗るためにやってきたというオバチャンの名調子を聞きながら、本当に楽しい“船旅”になりました。小堀に着くと、私とそのオバチャンは下船、子連れのお母さんはそのまま乗って北岸へ帰るとのこと。どうやら母子でクルージングを楽しんでいたようです。

 下船した後、オバチャンの話を聞いてビックリ。私は今、流山市に住んでいますが、そのオバチャンも流山在住。歩いていけるほどのご近所さんです。しかも私と同じく元関西人。すっかり意気投合して30分ほど話し込んでしまいました。元気です、オバチャン!私が自転車で走り回っているところを、彼女は歩き回っているとのこと。「今年は雉やノスリをよく見かける」など共通の話題も多く、楽しいひと時を過ごしました。

 私は、一人で勝手気ままに自転車を走らせるのが大好きですが、こういうのも良いですね。たまには立ち止まって、出合った人と語り合うのも、貴重な時間です。小堀の渡しは、そんな空間を作り出してくれるので、素晴しいです。まあ、誰と乗り合わせるかという運もありますが。



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