新川耕地は、万葉集にも詠われたほどの歴史ある農地で、オオタカなど猛禽類だけでも14種が確認されているほどの自然の宝庫です。流山市街地の北部、東葛病院の辺りから利根運河まで、流山インターチェンジを抱き込むように、南北に緑の大回廊を形成しています。

 この新川耕地は江戸川サイクリングロードからよく見えます。自然の宝庫だという知識も以前からありました。しかし、江戸川サイクリングロードが便利で快適であるゆえに、今まで走ってみようと思わなかったのです。

 一念発起してロードレーサーで新川耕地を走ってみました。感想は「今まで、なんともったいないことをしていたのか!」です。特に新川耕地の一番東側、水田と南北に伸びる傾斜林の間を走る農道(上の写真)は、自動車の往来も少なく、とてつもなく気持ちがいいです。特に夏は、午前中にここを走れば、林が日陰を作ってくれますので、涼しいでしょうね。

 それに細い農道まで舗装が行き届いているので、ロードレーサーでも“田んぼのあぜ道”を走ることができます。もちろん、このあぜ道は農地を通る道ですから、全速力で走るのはご法度です。その代わり、ゆっくりと走れば、様々な鳥がえさをついばむ姿、トノサマガエルの鳴き声、かすかな水の音を楽しむことができます。まさに田園ポタですね。

 利根川流域の田中調節池の農地と通じるものがありますが、新川耕地の方が生き物の営みが“濃い”気がしました。




 ただ、この新川耕地は存続の危機にあるらしいです。農家の担い手の方が高齢化している上に、つくばエクスプレスの開業などで宅地開発の波がしのび寄っているようです。調節池の方は数年に1度、利根川の増水で本当に池になりますから、宅地になることはあり得ませんが、新川耕地の方はそうはいきません。

 現在、土地を持つ農家や流山市、それに市民団体などが保存のための取り組みを進めているそうです。今まで、全然知りませんでした。サイクリングロードはそれはそれで素晴らしいのですが、そこばかり走って満足していると、大事なことを知らずに走りすぎてしまいますね。





 田園の中に鎮座するちょっとシュールな建物は、流山市クリーンセンター、要はゴミ処理場です。一応、環境保全を目指した施設らしいです。ところで、このセンターの西側の用水路は、釣りの隠れた“名所”です。地元の人を中心に、多くの釣り人が釣り糸をたらしています。何が釣れるのかと聞いてみたら、小指ほどの小さな魚が釣れるそうです。名前も教えてもらいましたが、聞いたことのない名前だったので、忘れてしましました(苦笑)。良い悪いは別にして、このセンターや高速道路の建造物は田園風景にコントラストを与えており、その対比と変化を楽しむことができます。




 新川耕地を利根運河方面から進入するのに、一番分かりやすく、快適なのは江戸川サイクリングロードから利根運河南岸のサイクリングロードに入り、隠れた桜の名所である「におどり公園」東側を右折して、南下する方法です。この道は、ファンケルの工場などがある流山工業団地を通り過ぎ、上記した傾斜林脇の気持ちのよい道へとつながっています。




  その「におどり公園」、万葉集に載せられた東歌の碑があります。

 『鳰鳥(にほどり)の葛飾早稲(わせ)を饗(にへ)すとも その愛(かな)しきを外(と)に立てめやも』

 この辺りで歌われたものです。碑の解説に従って、思いっきり意訳すると、「採れたお米を神様にお供えするときに色恋はいけないのだけれど、好きな男が来たら入れないわけにはいかないわよね」となります。とても率直でおおらかな歌ですね(笑)

 ちなみに「にほどり(におどり)」はこの辺りにも多数生息するカイツブリのことで、葛飾の枕詞です。そして、いにしえの葛飾の中心部は、この新川耕地を含む流山市や江戸川対岸の三郷市の一帯です。今でこそ、葛飾の名称は東京に独占され、葛飾=下町というイメージですが、昔は新川耕地のような大水田地帯 だったわけです。




 新川耕地に南側から進入するのは、江戸川サイクリングロードから入るのが一番分かりやすいでしょう。松戸方面、流山市街地から北上すると、農地が広がり始める直前に、流山排水機場があります。この辺りは、サイクリングロードが堤防の上と堤防の下の二層構造になっていますが、MTBなら堤防の上の道から一気に土手を走り降り、排水機場に向かいましょう。ロードレーサーなら下の道を走り、排水機場まで担いで降りましょう。排水機場の右(南側)を通り、突き当たりを左折し道なりに行くと、そこはもう新川耕地です。




 流山排水機場の目印は、この水門です。堤防を挟んで東側に流山排水機場があります。




 地図で見ると、新川耕地の農道は、高速道路や有料道路で分断されているようですが、実際に走ってみると、自動車道は高架になっているか、トンネルが開けられるかしており、こうした道路で分断されることなく自由に行き来できます。トンネルを抜けると、景色が変わったりして結構面白いですよ。




 新川耕地に、こんな未舗装道を見つけました。流山排水機場から新川耕地へ進入してすぐ、江戸川サイクリングロードに沿って1kmほど、この土の道が続きます。この新川耕地の道は昔のあぜ道の風情があって、とてもいいです。真夏ですのでとても暑いのですが、すくすくと育った新川耕地の稲の緑を眺めながら走ると気分も爽快です。故郷のあぜ道を走り回っていた遠い少年の日も思い出されます。



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