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<第29章>

ボランティア仲間の悲劇



ここで、ボランティア仲間の身に起こった悲しい出来事についてお伝えします。
(別のボランティア仲間から聞いた話としてここに書きます) 
 
3月下旬のある朝、私達が頼りにしていたボランティアの有能なまとめ役の人が、出勤前のボランティア活動を終えて出勤されようとしていた矢先に避難所前の車道で交通事故に遭われました。
詳しい事故の状況はわからないのですが、彼は自転車に乗っていたそうです。


不幸中の幸い、命に別状はなく、手足と顔を負傷されたとのこと・・。 
20代半ばの好青年で容姿端麗、才覚的にも、彼の前途は明るいものだったはずです。 
そんな彼に突然の悲運! 
そのうえ更に不運も・・。 
彼の場合、会社の通勤外(会社が支給している通勤ルート外)での事故とのことで、会社は治療費を負担してくれないらしいとのことでした。
折しも当時、マスコミを通じて「ボランティア保険の必要性」が話題になり始めた頃でした。 
 
実は、彼が事故に遭われるほんの数分前、彼は配布テントにいた私達ボランティアに「それでは今から会社に行って来ます! よろしくお願いします!」と、いつもながらハツラツとした感じで明るく声をかけてくださり、小走りで軽快にテントの前を走り過ぎて行かれたのでした。 
配布テントの私達も「いってらっしゃ〜い♪」と言いながら、手を振って彼を見送りました。

あのときのさわやかな彼の笑顔と動作、そして後姿を、私はなぜか良く覚えています。 
思えば、私が避難所で彼の姿を見たのはあのときが最後だったのです・・。 

その直後に学校の正門前で事故に遭われたなんて・・  絶句!!

思い起こせば、救急車やパトカーのサイレンが聞こえていました。
でも、都会では特に珍しい音ではないので、私達は気に留めることもなく、配布テントでいつもどおり、笑顔で作業に専念していたのでした。
 
その後ボランティア仲間から彼の事故のことを聞き、栃木に戻ってから彼にお見舞い並びにお礼の手紙を書き送ったのですが、お返事はありませんでした。 
本来の彼、ボランティア・ルームに設置されていたボランティア日誌に丁寧に回答していた彼、あの悲劇がなかったなら、きっとお返事を下さったように思います。 
とても行き届いた心配りをされる人でしたから・・。 

彼の事故について、私は今でも とても心が痛みます・・  


一日のボランティア活動を終えて夕暮れに避難所から帰宅する途中、
車の往来が多い大通りの歩道とはいえ歩いている人は私だけ・・
これは、万一のために、まとめ役の彼が私に用意してくださった笛です




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