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草木染めノート
野山や庭で採った草や葉っぱから、美しい色が生まれます。
染め上がった品々は、道の駅「どんぐりの里」で販売しています。
ホームページからのオーダーもできます。
草木染め
草木染めの手順
媒染・灰汁のこと
稲武の草木染め
草木染め
化学染料が登場するまで、布の色はすべて古今東西、草木や鉱物の色を原料にして染め出していた。化学染料の便利さに押されて、天然染料による染めは、長い間忘れられていたようだ。昭和のはじめころ、植物染料の研究が始められ、「草木染め」という命名もされた。
植物はどれでも基本的にそのものの色を持っているのだそうだが、植物によって濃い色が出たり出なかったりする。季節によっても色が異なる。色の成分が十分に出るときと出ないときがあるようだ。育った土地によっても色が違う気がする。気温や土の成分によるのではなかろうか。
だから、あるとき、ある場所で染めた色は、二度と出ないということもある。それも、草木染めの楽しみの一つだ。
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草木染めの手順
布を用意する。あらかじめ風呂の残り湯などにつけておき、翌朝、洗濯をする。
草木の色はたんぱく質と結びつきやすいという。そのため、絹やウールなどの動物性繊維が最適だ。木綿や麻などの天然繊維は、濃染処理をして、染まりやすくする。
濃染処理は、大豆の呉汁、牛乳を薄めたもの、茶殻を煮出して漉した液などにつける。つけたあと、すすがずに脱水し、日に干す。染料店で薬剤も販売している。
草木を煮出す。種類によって異なるが、だいたい30分から1時間煮出す。
煮汁を漉して、水につけておいた布を浸す。
30分から1時間ほど、ときどき布を振りさばきながら浸しておく。
媒染する。媒染は、発色と色止めのために行う。みょうばん、灰汁、酢酸銅液、木酢酸鉄液、消石灰などを使う。なるべく環境に影響を与えない薬剤にとどめたいので、酢酸銅液はできるだけ使わないようにしている。
30分程度媒染したら、染液を温め、ふたたび浸す。このとき、煮染めすると、さらによく色がつく。一晩つけておいてもよい。
この行程を何度も繰り返すと、堅牢度が増す。
水で洗う。絞っても色の水が出なくなるまでよく洗う。
よく絞って、日陰に干す。
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媒染・灰汁のこと
私は、アルカリ性の媒染には、草木の灰から取った汁を主に使う。草木の中でも椿がカリウムを多く含むため、もっともよいといわれている。梅の染めには梅の灰、桜の染めには桜の灰がよいとも聞いた。
剪定した椿の茎葉をなるべく生々しいうちに燃やし、灰がまだ赤いうちに水を少し張ったバケツに入れる。ジュッと音がするくらいの熱さがいい。
燃やすときは、地面にトタン板を敷き、周りにレンガやブロック、丸太などを置くとよい。私は、丸太を置き、半ば燃やしておいて、ストーブに使っている。
バケツに水を足し、数日置く。上のほうが澄んできたら、布でこして容器にためておく。1年以上持つようだ。
使うときには、2倍の水を足して媒染液にする。みょうばんで媒染したときよりも、いちだんと冴えた色になる。
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稲武の草木染め
●タカキビ
稲武で育てているタカキビ(go to
タカキビのこと
)は、赤い実をつける。殻を取り除いて、中身は食材に、殻は染め材料にできる。昔は竹で作った箸を染めたという。4年ほど前だったか、草木染目を始めて間もないころ、タカキビの殻を下さった方があり、染めてみた。美しい茶系のピンクに染まり、気持ちが弾んだ。赤系の色が出ると、うれしいものだ。マルバアカソに似ているが、もっとピンクが勝っている。ほかの草木ではなかなか出ない色だ。
その後、タカキビの会に入会し、ふんだんに殻が手に入るようになった。それでも、わずかずつ煮出して染めていたのだが、タカキビの会で開いた講習のとき、大量の殻を鍋に入れて煮出したら、とても濃い赤茶色になった。もったいないので捨てずに持ち帰ったら、そのあと7回も煮出して染めることができた。その後は多めに殻を入れて染め液を作ることにした。
赤系の染め液は、1番液は茶っぽい色に、2番液になって赤さが増してくるようだ。アカネほどではないが、やはり、最初の液は茶味が強い。
絹はオレンジがかったピンクになる。フルーツピンクとでもいうのだろうか。一方、植物繊維の木綿や麻は、茶味が強い。どちらも見飽きない色だ。
植物繊維の場合、あらかじめ濃染処理をするのが普通だが、麻とレーヨン混紡のスカーフ生地を、濃染処理をせずにつけてみたら、とても美しい桜色になった。薄いけれど、淡くて消え入りそうな色だ。
いずれも、灰汁の媒染が最高だ。ミョウバンだと色が鈍くなる。酢酸銅液で、赤い茶色、木酢酸鉄液だと、赤みを帯びた灰色になる。この色も渋くて捨てがたい色だ。ただし、最初に赤みを強くしすぎると、なかなか鉄が染まりつかない。
葉も染まると聞いたので、収穫してだいぶ日数がたったもので染めてみたことがある灰汁で渋い黄色、酢酸銅液で渋いヤマブキ色のような色になった。どちらも、草木染めでは、よく出る色だ。採ったばかりの葉で、今年の秋に染めてみたいと思う。
タカキビの根も、赤い。アカネの根のように染まるかもしれない。近々、タカキビの会のKさんが、畑に残っている根を掘り起こしてくれるというので、それで染めてみることにする。
タカキビのぬかは、パンやクッキー、もち、かきもちなど食材としての利用価値が高いので染めに使ったことはないが、こちらも、さらしの布にいれて、煮出してみようと思っている。
●黒米
稲武町特産の「朝紫」という古代米がある。スプーン1杯を3合のお米に入れるだけで、紫色のご飯が炊ける。もち米なので、ご飯がもっちりしておいしくなると、評判がいい。もったないが、その黒米を染めに使うと美しい紫色になる。
普通、草木を煮出すときは沸騰してから20〜30分以上煮続けるが、黒米は、沸騰させると色がにごる。椿の花などの花びら染めの場合と同じだ。黒米と水を入れた鍋に、食酢を適宜加える。赤や紫の色を引き出すためだ。沸騰させないようにしながら煮出し、漉す。
アルカリ媒染で、鮮やかな紫色になる。
一度だけだが、鉄媒染で、青い色が出たことがある。理由はわからない。まるで藍で染めたときのような水色になった。草木染めは、こういうことがあるからおもしろい。
●コブナグサ
別名「八丈カリヤス」といって、黄八丈の染め材料にする植物だ。葉っぱの形が小鮒に似ているので、この名前がついたという。ススキのミニチュアのような形で、えび茶色の穂が美しい。ドライフラワーにして、リースなどにつけると、かわいらしい。
庭の片隅でちらほら見かけるだけだったが、一昨年、畑の一角をまったく耕さないで放置していたら、このコブナグサの群落ができた。
アルカリ媒染で、可憐な黄色が染まった。ところが、霜が降りはじめたころ煮出したら、見事な若草色になった。この時期に、そのものだけで緑色を出す植物は思いつかない。次の年、群落を残そうとそのままほうっておいたのだが、天候の加減か、穂が早い時期から白茶けていて、染める時期を逸してしまった。畑に蒔いて育てている染色家もいるそうなので、そのうち真似てみようと思う。
●マルバアカソ
イラクサ科のカラムシの仲間。大きなシソのような葉だ。茎が赤いのでそれと知れる。このあたりではどこでも見られる雑草だが、下流の地域では見たことがないという。同じイラクサ科のヤブマオは、丈が高く、目立つ植物だが、こちらは逆に下流の地域でしかお目にかかったことがない。
どちらも染め材料としては優秀で、茶系の赤を出すのにとても重宝している。タカキビ染めを知るまでは、季節になると、マルバアカソとヤブマオの群落を探して歩いていた。
一昨年の初夏から夏にかけての時期は雨が多く、気温も低かった。毎年7月ころ、穂が出る前のマルバアカソを煮出すのだが、この年のマルバアカソは茎の赤みが少なく、もしかしたらうまくいかないかもしれないと危惧していたら、案の定、煮出しても赤くならず、鈍い黄色になってしまった。赤い色素が雨で流れたなどというと、非科学的なのだろうか。 昨年はいつにもまして、美しいピンク色に染まり、安心した。
●キク
稲武の菊は評判がよいそうだ。特に夏の白い菊は、まばゆいほどの純白になる。名古屋の郊外に住む知人が稲武の菊を墓に供えておいたら、それを見た花屋が「稲武の菊だろう」と言い当てたという。
キクは普通しぶめの黄色が出る。草木染めではポピュラーな色だ。よく見ると少しずつ違うのだが、ほぼ同じ鈍い黄色系の色だ。
ところが、霜の降り始めるころに栽培農家の畑で刈り取られないまま打ち捨てられた菊をもらって染めてみたら、黄緑色が出た。一度きりの出来事だ。
そのあとは、やはり鈍い黄色になった。
コブナグサも菊も気温が低くなったときに緑色が出たわけだが、どういう自然のからくりなのだろうか。
●栗の皮
栗の皮からも色が出るというと、年配の婦人たちは喜んでくれる。つましく暮らしてきた彼女たちにとって、無用とされていたものから美しい色が生まれるということが、魅力に思えるらしい。栗の季節に声をかけておくと、あちこちのお年寄りから、家族のために剥いた栗の皮が集まる。
栗の皮を煮出して、アルカリ媒染するとベージュ色になる。その色を残すために麻紐で縛り、鉄媒染する。ときには、青黒っぽい濃い灰色になることもあり、他の草木染めではめったに出ない渋い色合いになる。鉄を通した後、消石灰の上澄みにつける。こうすると、栗の色そのものが出る。麻紐をほどくと、ベージュと濃い灰色、栗色の3色で模様ができている。
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